BA-LUE Platform - 社会を知る新しいジャンル
2004.11.23 15:22 JST - KEITAI12 (discussion keitai)
SFCケータイラボでは「ケータイを知る」ことと「ケータイで知ること」とを、技術と社会学の融合ポイントとして研究しているが、その中で開発・運用している「BA-LUE」プラットホームを題材にして、ケータイによる社会調査ツールとして切り開いている新しいジャンルとその可能性を探った。
水島
今回ケータイのカメラとGPSを連携させたアプリケーションを開発していおり、当初は位置情報に基づいたソーシャルネットワーキングアプリケーションを作ろうと考えていたくらいで、情報を集める部分でしかアイディアを持ち合わせていなかった。それをどう活用するか、どうやって整理するかについてまでは考えていなかった。
松村
僕なんかの感覚だと、自分がどの場所で何をしているのか、と言うことが可視化されてくるだけでも結構面白いと思っているが、やはりそれだけでは日記の域を超えないかもしれないし、アプリケーションの運用を考えるとあまりおもしろみがないかもしれない。
岡部
幸いSFCの同じ研究室に席を置いていた関係で、社会調査の手法としてパッケージ化する提案をした。今までのインタビューやコミュニケーション記録を付けてもらう手法は、紙ベースで行ってきたが、このシステムを活用するとものすごく良い、と言うよりは違った結果が出てきた点が興味深い。
水島
写真と位置情報が取りたい情報だった。これにプラスアルファする情報を調査対象からチェックボックスやテキストによって入れてもらうことになるが、これを入力する手間を何とかしなければならない。そこで、写真を撮ってアップロードした後、GPSによる位置情報を取得して、チェックボックスや自由入力欄などへ誘導する、一連の流れを1つのアプリケーションで実装することにした。
岡部
これまでの文字やボイスレコーダーなどをベースにした調査では、本人にインタビューをしたとしても忘れてしまっていたり、うっかり気付かず抜けてしまっている内容があったりした。ところが地図(GPSによる位置情報から取得)と写真による調査はとても刺激的だった。
松村
調査として何が変わったんですか? 例えば出てくる情報の内容が変わっただとか、そもそも調査する人の意識が変わっただとか、そういう大きな変化があったのですか?
岡部
具体的な調査は、「持ち物を使ったときに記録する」というオーダーでGPSモブログをお願いした。自分の生活をトリタメテ逝くというのはまだあまり経験のないことだったので、まずユーザーがGPSモブログという経験にインパクトを受けていた。自分で自分をコンサルティングするような感覚がある。他人のモノを見たいか、と言われるとそうでもないが、もし見たとしても自分との比較、という立ち位置になってくる。
水島
人の記憶というのは思ったよりももろいモノで、写真も位置情報もそれを思い出すトリガーとしての役割があることが、今回の調査を行ったことで分かってきた。コメントと組み合わせることにって、さらに詳細な記憶を呼び起こすことができるようになる。
松村
始めに「日記の域を超えない」と言ったけれど、ここまでの話を聞いていると、日記とは違うモノになっているかもしれない。日記はその場で考えたことが中心になっているが、GPSモブログの場合はその場所と出来事と考えたことの複合的な記録・記憶として残る。そこがこの調査の決定的な違いになっているのかもしれない。
天笠
自分の生活にトリガーやベンチマーク、ブックマークを置いていくというのが今までと違う感覚を作り出しているのではないか。それによってGPSモブログでは社会的な自分のポジションを語る社会調査ではなく、自分を軸に物事を考えて、捉え直す形での社会調査ができるようになっているのではないか。
松村
ケータイは個人の目線がとても色濃く含まれてきているが、その現れかもしれない。マスコミが今まで社会的な信頼を得てきたが、それとは違う価値観を作り出していく可能性が見えてきた。
天笠
相対的にはマスコミの地位の低下に繋がってくるのではないか。
水島
ウェブログも、マス向けに発信するウェブログと、より内向きのウェブログとではっきりとした性格の違いが、このGPSモブログによって見えてきたと思う。今回はひたすら自分の履歴を残していく、自分のためのログになっている。
松村
明らかな差が見えてきた。今までのメディアや調査は社会の中の自分を考えさせるモノ、ケータイによる調査は自分が中心の磁区や支点で自分を掘り下げるモノとして、新たなジャンルを見いだすことができたのではないか。
天笠
世界系というモノがあって、例えばケータイが繋がる範囲、限られた範囲だけを世界だと認識する。それが社会性を獲得していく過程に入っていくと思う。
岡部
そのためにも、本当にケータイでずっと自分の生活を記録して欲しい。
水島
自分の視点を貯めていくのは面白い。行動履歴に留まらず、自分そのものの蓄積ができるのは、カメラ付きGPSケータイだからこそのモノだ。
天笠
本当に、新たなジャンルが生まれた、と考えるべきですね。
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松 村 太 郎