2005年私家版チェックリストを作る
2005.04.07 11:48 | by TARO MATSUMURA
COLUMN, OUTPUT | digitalcampus
40本目、最終回の原稿。ここまで書き綴ってきたコラムは、リアルタイムに書いているときは尖った最新事情だったが、今からすると過去の出来事の記録になっているわけだ。これをどう扱っていこうか、というのは僕としては結構楽しみに考えていることだし、「資産」として大切にしていきたいと思っています。
取材させて頂いた皆様、サポートしてくださった皆様、ありがとうございました。
いよいよ新学期も始まった。キャンパスではガイダンスや健康診断、サークルの勧誘活動など、昨年の春と同じ風景が広がっている。学校という場所は変化を見つけるのが難しい場所でもある。学生こそ入れ替わっているものの、季節と行事などのサイクルは大きく変わらないし、授業だって基本的には昨年と同じものがラインアップされていて、そこまで大きく変わることはない。
だからこそ、学生の変化、ネットやケータイの使い方の移り変わりみたいなモノをモニタリングするのにはちょうど良い環境であるともいえる。2005年度のキャンパスで何が起こるかと考えたときにキーワードとなるのが「想像によるチェックリスト」だ。つまり「○○の未来は今後こうなるだろう」とひとしきり考えて、それをアーカイブしていくという作業である。
というのも、こういった想像や予想が、意外に何らかの形で当たることがあると思うからだ。別に僕が趣味で占いをやっているというわけではないし、ただ無責任に言い放つだけだけれど、当たるか外れるかはともかく、将来どうなるかを予想してチェックリストを作っておくのは面白い。
3月の末に僕は研究室の自席を引き払うための片づけをしたり、パソコンのハードディスクに置いてあるファイルをDVDに焼いたりしていた。なかなか腰が上がらず、取りかかりは毎回遅いものの、やり始めれば、僕も片づけは好きなのか凝ってしまって時間をかけてやろうとする。
単純に物を片づけるだけならすぐに終わりそうなものだが、ついついそこにある本をパラパラとめくってみたり、過去のメモ書きやパソコンのファイルの中身を見ながら片づけたりするので、単純作業の2倍以上時間がかかってしまう。しかし宝物のようなモノと出会うこともある。例えば過去にメモしたり記録したりして保存した資料なんかがそれだ。
僕は日常使っていた手帳やメモを1998年ごろの分からすべて残してある。好きで使っているのは、A4サイズで方眼が入っているノートだ。インターネット上のブログやパソコン上のアウトラインプロセッサやテキストエディタなど、お気に入りのテキストツールを一揃いにするまでは2〜3カ月に1冊のペースでノートを使っていたが、最近では半年に1冊程度の頻度に落ちている。手書きしていたものがデジタル化されつつあるという証拠かもしれない。
デジタル、アナログで残されていた過去のメモや資料を整理していると、ケータイの未来を予想するというディスカッションメモが出てきた。自分で過去に書いたものながら、これがまた興味深い。未来になるとどんなケータイが出てくるかという後輩とのディスカッションから出てきたアイデアには、「ゴルフスイングが練習できるケータイ」「ヘルスチェックができるケータイ」「複数台で5.1chサラウンドができるケータイ」「着臭」「空気を読むケータイ」などがあった。
1年〜半年前のメモにあるアイデアの中には、驚くべきことに現在既に商品化されているものがいくつかある。例えばゴルフスイングができるケータイというのは、ケータイを振ることで操作ができる端末としてシャープから発売されていて、内蔵されているアプリケーションでゴルフゲームを楽しめる。また、ヘルスチェックができるケータイというのも、万歩計を搭載した端末が富士通からリリースされている。
ケータイのことを普段考えているからといって、今現在のケータイの技術や機能の限界を意識して想像しているわけでもない。例えば「複数台で5.1chサラウンドを再生する」というアイデアについて、どの端末が重低音を担当するのか、と考えると、実現されるかどうか不安でたまらない。重低音担当の端末はウーハーのみを搭載して、着うたも低音重視になってしまうのか、あるいは高音用のスピーカーと低音用のウーハーを両方搭載した巨大なケータイになってしまうのか。
と、今ここまで書いてきての思いつきだけれど、バイブレーション機能をうまく利用して、机の上に置くと低音が鳴っているみたいに微妙な周波数の差で音階が付けられればよいのかもしれない。そうすれば普通の端末でも重低音担当になることができる。机の材質から音階のズレをフィードバックして修正すれば、どんな材質の上でも正確にベース音を刻むことができるようになるんじゃないだろうか。
あるいはこの際だから、ウーハーを備える低音再生を重視したヒップホップ仕様のケータイにしてしまってもよい。もしそういうケータイが存在していたら、ストリートやクラブカルチャーが好きな人たちの間ではやるかもしれない。例えば友人の中にヒップホップが好きでウーハーケータイを持っているヤツがいれば、他の友人達のケータイと合わせて5.1chの音場環境が作れるようになるし、いなければ低音が抜けたサラウンドになってしまうわけだ。
「ケータイはアイデンティティの外部器官だ」という学生の意見を以前聞いたことがあったが、そのケータイがどんなサウンドを鳴らすことができるかというのもまた、アイデンティティのひとつだというわけだ。なるほど納得してみたくなる。
ウーハーケータイやそれを持つアイデンティティでひとしきり盛り上がってしまったが、この「複数台で5.1ch再生」というアイデア、同じ場にあるケータイ同士が連携して協調作業をするという点にフォーカスが当たっていたのを忘れていた。
ケータイ同士がキャリアの電波を使わずにアドホックにやりとりをする、という状態からいえば、PSPやニンテンドーDSなどの携帯ゲーム端末でゲームシェアリングの機能が実現されている。ケータイという形ではないが、街中の交通機関の中などで、レースゲームの対戦相手を探して小学生とゲームで対戦した、なんていう友人もいるくらいで、車両を移動しながら対戦相手を探すという行動は、もはや奇妙な挙動からよくある光景になろうとしている。
実はゲームシェアリングもまた「5.1ch再生」のアイデアからは脱線している。このアイデアは人がコミュニケーションを取るための下地作りと言うよりは、ケータイに役割を持たせてその場で協調作業に参加する、あるいはその環境に求められていることを実行するというものだ。だから「空気を読むケータイ」と実は同じベースにあるアイデアになるのかもしれない。
とまあ脱線しっぱなしで考え進めてきたが、想像をする、無理矢理予想をしてしまう、というのはこういうことだ。考えを進めていくと眠っている色々なアイデアにたどり着けるし、それぞれが1つずつ「当たった」「外れた」「まだ到達していない」「とうていムリ」「実現できても使われない」とチェックすることができるようになるのだ。
例えばヘルスチェックについては、万歩計だけでなく血圧や血流、心拍数なども含めてチェックするというよりつっこんだアイデアだったし、ゴルフのスイングも、それ専用の機能というよりは振るというインターフェースを追加することで実現したアプリケーションのひとつだった。完全ではないが同様の機能が実現されている様子を見ると、「未来のケータイはこうなる」という予想が的外れではないことが分かってくる。予想が浅かった、甘かった、とはいえるかもしれないけれど。
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