僕はMacでAdobe Design Collection(現在でいうところのCreative Suite)を愛用している。Photoshopでblog向けの画像を加工し、Illustratorで名刺やポスターなどのデザインをし、昨年の秋以降は作るドキュメントの全てをInDesignで制作して、Acrobatに書き出してファイリングしたりメールで送ったりしていた。よくありがちなワークフローである。
この夏までにリリースされるであろうCreative Suite 2にアップグレードしようと考えていた。これからFlash MXを買って使い始めようと思っていたところだった。そんな2社が、アドビの34億ドルによって1つになったというニュース。デザイニングのアプリケーションの双璧という印象があったAdobeとMacromediaだったが、これらが統合されていくとどうなるのだろうか。
・CNET Japan: アドビ、マクロメディアを34億ドルで買収
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単純に融合?
PDFは紙媒体を様々な形で流通させるべくAdobeが仕様を策定していて、アプリケーションのヴァージョンネームで言えば現在はAcrobat 7.0シリーズがリリースされている。Adobeの努力のお陰か幅広いプラットホームでの閲覧・生成が可能なPDF。
僕も身近な経験として、同じソフトであっても表示や印刷結果が異なるMicrosoft OfficeのファイルをPDFにして送ったりもらったりすることで、MacとWindowsの表示の違いを乗り越えることがよくあった。アメリカでも公文書をPDFで作成することが推奨されているほどだ。
一方Flashはウェブ上でのアニメーションに始まり、インタラクティブなウェブページを入れる用途で使われている。ほとんどのブラウザにFlash Playerが入っていることから、Keynote 2で作るスライドをFlashに変換してウェブサーバに載せておけば、線やフォントがきれいなままの状態でブラウザのみで共有できる。
小檜山先生もおなじみの授業のスライドはPowerPointではなくFlashで作っている。「(Keynote以前に)Illustratorで作った画像なんかがきれいに貼り付けられて、学生みんなが見られるのはFlashだということで、わざわざ使い方を覚えて使っている。印刷しにくい、という苦情が来ているのを除けば、良い使い勝手だと思う」とは小檜山先生のFlashで作る授業スライドに関するコメントである。
もともとPDFとFlashはベクターベースという点で近かったのではないか。PDFでは紙という概念に即した文書管理やオンラインでの文書閲覧と言ったノウハウを獲得し、Flashではアニメーションのノウハウからビデオという新しいフィーチャーを手に入れている。
単純に融合させるなら、PDFの中にFlash的なインタラクティブな要素やムービーが埋め込まれることになる、と言うイメージだろうか。Flashはムービーを録画・再生するインターフェイスに作り込むことも出来るようになっている。
もしも印刷する媒体側に電子ペーパーが普及すれば、新聞が届いたときに今までは決定的瞬間だった1面トップの写真がムービーとして動くようになり、それはPDFだけあれば実現できる、という状態。これがFlashを飲み込んだPDFの姿だ。あまりに安直だけれど、あまりにわかりやすいたとえ話なんじゃないかと思う。
ソフトウエアブランドとカテゴリ
さてAdobeとMacromediaのソフトについて、僕がこれまでどのように使ってきたかを考えてみると、結構いいとこ取りをしてきたような気がする。先ほど書いたとおりAdobe Photoshop、Illustrator、InDesingは使うけれど、ImageReadyやGoLiveやLiveMotionは使わない。一方でMacromediaのソフトも、DreamweaverやFlashは使うけれどFreeHandとFireworksは使わない。
もっともここ数年はblogなどのCMSばかりに注力してきたのでHTMLもCSSも手打ちが出来るようになってDreamweaverは新しく買ったPowerMac G5にインストールすらしなくなったし、FlashでコンテンツはおろかアニメーションGIFすら作らなくなってしまった。Microsoft Officeはもっと使わなくなってしまったけれど。
そう考えると僕が今まである程度いいとこ取りをしてきたソフトのチョイスが、事実上Adobeグループ1社によって提供されるようになるという点においては、クリエイティブアプリケーションのMicrosoft Office化、つまり選択肢がそれだけになる、と言う状態がやってくる。多様性が失われるという点で、僕の思想的にはマイナスイメージがついてしまう。
僕の思想的な点はさておき、ビジネス的な意味でもAdobeが独占することになるので、競争がなくなった状態での舵取りはとても重いものがある。しかしこれまでビジネスソフトというカテゴリを作って唯一の存在だったMicrosoft Officeのように、何らかのカテゴリを新たに作り出す可能性もある。
現在は今回の買収によって、Adobeがクリエーション作業のソフトウエアとしてスタンダードを取りつつあるが、一方でPDFはビジネス文書というカテゴリでのスタンダードを取っている。一方でウェブコンテンツのスタンダードを握っているFlashは、ビデオ機能、コミュニケーション機能、ケータイへの進出などで、ウェブコンテンツの領域を広げ、更に出来ることをも広げつつある。
新たなコンテンツの姿を作り出せるか
そういう外観から、ビジネスなりエンターテインメントなりを横断した意味での「コンテンツ」というモノについて、何らかの新たなカテゴリを生み出す可能性をAdobeが握ることになるのではないか。
それらをどのようなフローで生み出すのか。どのようなデバイスや機会に閲覧させるのか。非常に多彩なデバイスやプラットホームでの閲覧が可能なコンテンツを、1つの元となるクリエーションによって自動的に生成することが出来るようになるだろうか。
まず激しい効率化が訪れる。これまで使い分けてきたメディアの違い、つまりポスター、雑誌、ウェブ、ビデオ、モバイルといったメディア特性を考慮して、1つの作品からそれぞれの特性に合った形式でのアウトプットを得ることが出来るようになる。
これを追求していくと、既存のメディアの違い、と言う概念すら打ち壊した、新しいコンテンツの姿という物を作りだしてくれるような、飛躍した予感と期待を僕は持っている。
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松 村 太 郎
TARO MATSUMURA
UPPERWESTSTUDIO
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)
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