Mobile Web Design - FlashとPDFから考える
2005.04.20 04:16 JST - COLUMN (keitai)
何の記事も読まないでこの「Adobe、Macromediaを買収」という見出しを見たときに思い浮かぶのが、上で説明してきたPDFとFlashについて、「PDFがFlashを飲み込む」みたいな直訳だ。これじゃあまりにもショートしすぎている感じがするけれど、ケータイという視点を持つと色々な伏線が絡み合っていて面白い。
AdobeがMacromediaを買収したことは、ケータイのコンテンツにどのようにして影響があるのだろうか。ケータイへの対応で行けば、日本においてはFlashが先行している。DoCoMoが始めにFlash埋め込みのコンテンツに対応し、その後auもVodafoneもFlashのアニメーション付きのコンテンツに対応した。Adobeが今後モバイルにどのように取り組んでいくか興味がある。
一足先にケータイ対応したFlashだが
ケータイでFlashが見られるようになったとはいえ、キャリアやコンテンツプロバイダがFlashを使いこなしているかと言われると、決してそんなことはない。
内容の前に、コンテンツを表示させる際の特性からして問題がある。同じ内容を表示させる際、テキストベースで数ページに渡って表示させるのと、Flashアニメーションで表示させるのとを比較すると、後者の方が美しいがパケット代が余計にかかるし、表示させるために必要な読み込むデータ量も後者の方が多くなる。ケータイ端末の処理能力の遅さも合わせると、ケータイに求められる「サクサク」感が損なわれてしまう。
そんな理由からか、多くのウェブサイトで見受けられるのは、Flashをちょっと動くメニュー、いわばキャッチの効果として使って、残りのコンテンツ本体についてはこれまで通りのテキストベースで表示させる、という使われ方だ。
こういう使い方なら、パソコンの画面で閲覧するウェブサイトにありがちな感想、「Flashのトップページやアニメーションするメニューはどうでも良いから、早くコンテンツにたどり着きたい」というストレスがケータイにも持ち込まれた、と言う印象を超えない。
意外と高機能なFlash Lite 1.1
おさらいとして、ケータイ向けのFlash Liteで何が出来るか、端末に搭載されている機能ベースで調べておく。DoCoMoのFlash Lite対応端末についてのページ、auのFlash Lite対応端末についてのページが参考。
Flash Lite 1.1からはボタンキーをトリガーにして、外部のFlashファイルを読み込む事が出来るようになっている。つまりFlashを情報ブラウザにすることが出来るわけだ。待ち受け画面にすることができるし、音声ファイルを再生することも出来るので、なんだか色々とアイディアが浮かんでくる。
着信や端末のフリップを開く、閉じると行った、ボタン以外のトリガーを検出することも出来る。それだけでなく、時刻や電波の受信強度、電池の残量と言った端末の状態を取得することにも対応した。またアプリケーションから端末のバイブレーションを使うことも出来る。このあたりまでくると、1世代前のほぼJavaのアプリと同じようなことが出来そうだ。
auの端末では位置情報を扱うことも出来るから、待ち受けFlashにフリップを開いたときに位置情報を取得して、その場に応じた情報を表示、といったギミックを仕掛けることも出来るのだろう。またニューロポインタを搭載しているDoCoMoのFOMA Nシリーズでは、Flash画面上でカーソルによる入力を行うことも出来る。
DoCoMoとAdobeのPDF提携
4月2日のエントリーで、次期FOMAの共通機能としてPDF閲覧機能が搭載されるという話を紹介した。AdobeとACCESSとが、ケータイ向けのウェブブラウザNetFrontにAdobe Reader LEを載せて、次のFOMAに搭載していこうという方向性である。これは何らかの伏線になるんじゃないか、とわくわくしている。
ケータイの性能や現在の資産から考えて、ケータイでのブラウジングの際、FlashはHTMLのインラインでもOK、PDFは別途Adobe Reader LEを起動して閲覧、というスタイルで、PDFがケータイに入っていくだろうと思われる。一方、この文章の冒頭では「PDFがFlashを飲み込む」という単純すぎる表現をした。
この単純すぎる表現は、PDF閲覧ソフトでFlashが読めるようになるんじゃないか、埋め込めるんじゃないか、ということだ。となれば、Adobe Reader LEはFlash表示が可能になっていくわけで、これがPCとケータイとで同時進行していけば、表示の大きさの工夫こそ必要だが、PCと同じPDFコンテンツをケータイでも表示できるようになるんじゃないだろうか。
モバイルウェブのデザイン
前のエントリーにも書いたけれど、PDFとFlashが扱えるメディアと出来ることの領域を広げていくことで、新しいコンテンツの姿が生まれると書いた。それは表示させる媒体に自動的にフィットして、自ら見やすいように自分の姿を変えてくれたり、見る状況に応じたインタラクションを起こしてくれるようなモノが出てくると、僕自身期待をしている。
そういうデジタル・アナログのコンテンツそのものが融合したり、あるいは新たなコンテンツ像が造り出されていく中で、ケータイで扱われていくコンテンツの姿にどのような可能性があるのだろうか。
他のコンテンツとモバイル環境との決定的な違いは、メディアの人間との距離が圧倒的に近いという点、移動している点、位置情報がある点、場所というコンテクストが変化する点などが挙げられる。ケータイのFlashでは既に、位置情報の取得、時刻や電波状況といった端末のステイタスを取得出来、位置情報の変化から移動やコンテクストの変化を推し量ることだって出来るようになっている。
ものすごく概念的に捉えるなら、Tomatoがデザインしたテレビ朝日のロゴデザインのようなコンテンツだ。テレビ朝日の番組を見たり、六本木ヒルズのテレビ朝日の正面玄関の前を通ったりすると、ブロック型のロゴが色や形を変えてめまぐるしく変化するアニメーションを見ることが出来る。
確か2002年頃だっただろうか、長野県穂高でテレビ朝日の横井勝(ビジュアル・アイデンティティ・マネジメントチーム)さんの話を聞いたことがあるんだけれど、そこでのロゴデザインの話は「ロゴ=固まったグラフィックマーク」という固定概念にとらわれず、「永遠に動き続ける映像」というイメージである、と解説があった。
コンテンツ=固定・固着されたモノという概念から、コンテンツとそれを構成するデータとを分け、人間のコンテクストに応じて選ばれたデータを、コンテンツとして再構成して提供する。そういうイメージが、次のモバイルウェブのデザインの大枠になるのではないだろうか。
ケータイの上でPDFとFlashがくっついたらどうなるか、と言うきっかけからずんずんと大枠へと上り詰めていった格好になるけれど、現在のケータイウェブではなかなかこういったアプリケーションや使われ方が出てきていないんじゃないかと思う。あったとしても、利口な人間が既存のウェブを使いこなした方が的確になっているのだ。
利口な人間ですら便利に使っていくような次のモバイルウェブのデザイン、と言う視点で、もう少し考えてみたいと思う。
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松 村 太 郎