2007.01.30 18:00 JST - REVIEW (interface mono pen)
メモ魔、アナログ派へのためのキラーノート-- Justsystem airpenストレージノート Limited Edition IV
僕は日頃からノートパソコンを持ち歩くことが多いが、それ以上にスケジュールを管理するための紙の手帖と、何か考え事をするときに自由に書き殴るプロジェクトシート(方眼入りで切り離せるノート)も持ち歩いている。要するに、メモ魔なのだ。ある種、触れた情報を整理する儀式のようなモノだが、これがデジタル化されても良いのではないか? そこで取り出したるは、ジャストシステムとぺんてるとアスキーの共同企画商品が「airpen ストレージノート」である。
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一見は上質なバインダーノート
手書き認識を実現してくれるノート、というととてもデジタルな様子を思い浮かべがちだが、airpenストレージノートは違う。黒い本革のしっかりとしたバインダーノートという印象が、airpenストレージノートを初めて見たときに伝わってくる。基本は本革の黒だけだが、前面に付いているペンホルダーは、赤、白、茶の3色展開でアクセントを与えてくれる。このペンホルダーに、airpenストレージノートのペンが付属してくる。
ノートを折りたたんだ先には、横長のセンサーユニットが配置されている。ノートのタテの幅いっぱいではなく、一回り短いサイズで弧を描くような曲線で形成されている。ペンと共にプラスティックの素材感は革のノートの中の雰囲気にはマッチしないが、黒で統一されている点で大きな違和感を覚えない。なにしろ、これがデジタルグッズだとすぐ分かる人も少ないのではないか、と推測できるからだ。電池は単4乾電池1つで動作するので、電池の少なさがサイズや軽さに寄与しているのだろう。
本体のサイズは242mm×240mmのほぼ正方形に近いカタチをしており、厚みは25mm。重さは550g。普段僕はA4の革のバインダーとRHODIAのノートを使っているが、これに比べても少し軽いくらいだ。A5ノートの部分は上から皮の表紙が折りたたまれるが、センサーユニットの部分は常に露出する。センサーユニットの曲線に会わせて、下表紙の縁も弧を描いていてカタチの統一感を感じることが出来る。またバインダーはそのまま折り返せるようになっているため、机のないところでのメモにも威力を発揮する機能性を兼ね備えている。
そしてデジタルペン。センサーが仕込まれているので重たいかと思っていたが、自分が使っているRotringの伸縮式の万年筆よりも軽いくらいであった。キャップを外すと通常のぺんてるのボールペンが顔を覗かせる。書き味も本当に普通のボールペンそのもので、リフィルはぺんてる製KFS7-AD(黒インキ)が用意されている。ちなみにペンのお尻の部分を明けると、SR41というボタン電池が2個入っていて、この電力を使って筆跡の情報をセンサーに送るようだ。
一目見ると品の良いバインダーノートと普通のペンのセットのように見えるairpenストレージノート。当然普通のノートとペン同様、紙に文字を書いてそれを記録しておくことは出来る。ところがセンサー部分の電源を入れて紙を書き始めれば、「ストレージノート」の名を冠する理由が分かってくる。
まずセンサーユニットの電源を入れて、センサーユニットに並ぶ5つのボタンから「1/NEW」をペン先で押すと、新たな紙で書き始めることが出来る。ペン先でボタンを押すと、ユニットの上にあるインジケータが知らせてくれるので、キチン通されているかどうかを判断するのに便利だ。準備が出来たら早速ノートに書き始める。ボールペンは紙に少し強めにこするように書くのだが、紙にペン先が当たるとわずかに本体にクリック感が感じられることに気付いた。
airpenストレージノートが読み取る原理は、赤外線と超音波のダブルセンサーによるものだそうだ。高速が音速よりも早いことから、赤外線で読み取り開始の合図を出し、ユニットの両端に仕込まれている2つの超音波センサーによってペン先の位置を算出し、これを連続的に行うために、文字のような細かい文字の集合体のようなデータも読み取ることが出来る。本体にはA5サイズなら100枚分のデータを蓄積できる2MBの容量を持つ。
一通り書いてみたところで、Windows PCとairpenストレージノートをUSBケーブルで接続してみる。airpenストレージノートの本体にはmini USBポートが付いており、例えばデジタルカメラのメモリカードリーダーやPDAで使っているモノをほぼそのまま流用できる。接続してユーティリティソフト「airpenマネージャー」を起動すると、特に操作をすることなく、センサーユニットに溜まっている読み取ったデータがPCの画面上に表示される。
僕の文字の上手下手の問題は置いておいて、本当に書いたとおりに読み込まれている様子が分かる。天気図の枠線だけが、何らかの理由でずれてしまっているが、それ以外は細かく書いた雪だるまのディテールも含めて、キチンと再現されている様子が分かるだろうか。実際に書いた紙の写真と文字と図を混ぜた作例を両方ともフォトレポートに載せてあるので、精度の評価をしてみて欲しい。
ちなみにセンサーユニットは取り外すことが出来るようになっているので、お手入れの際や、別のところでセンサーを使いたいと言う場合にも対応できるだろう。センサーユニットは、A4やリーガルサイズの紙でも読み取ることが出来るようになっている。
天気の概況と簡単な天気図と雪だるまのイラストを描いてから、一度ユニットをリセットして(改ページに相当する)、今度はUSBケーブルに接続したまま読み取らせる、直接読み取りをするモードでノートに書いてみる。今度は文章と、クルマのイラストを書いてみた。書いている最中は、線が書き終わる毎にPCの画面上に線が表示されていく。精度はメモリユニットに貯めてPCで読み出す際と変わらないが、その都度きれいな線が画面に再現される様子には感動を覚える。
例えばキチンとプロジェクターとスクリーンが用意されている会議室でアイディアを練る際に、プロジェクターと繋がったPCにairpenストレージノートを接続すれば、大きな画面にメモを出して、アイディアを共有しながら会議を進めることが出来る。しかしそのデジタル化されたデータをどうするか。出来れば、その場にいた人と打ち合わせ後もアイディアメモを共有して起きたいと思うものだ。当然、airpenストレージノートはこれに対応する。
読み取ったデータに関しては、そのまま画像としてファイルに出力することができ、電子メールに添付したり、ワープロやプレゼンテーションのファイルにそのまま貼り付けることも可能になる。そのままプリンターで印刷すれば、ノートの紙を切り取ってコピー機に走ることなく手書きながら資料として共有することも出来るだろう。また予め決まったフォーマットの用紙を使っているなら、フォーマットと読み取り結果を合成して保存すると言った使い方も可能だ。
手書きのデータとして取り回しをするのも便利だが、さらに踏み込んで完全にデジタルデータ化することもできる。試用版として付属してくるInk Magic for airpenを利用すると、手書きで書いた文字をテキスト化してくれたり、表組みを作成してくれたりし、画像ではないキチンとしたデジタルデータに変換してくれる。
僕が試してみたのは、読み取り結果をJPEG形式の画像に保存し、それをAdobe Illustratorで読み込ませて、「ライブトレース」機能にかけると言うことをしてみた。ライブトレースは、写真や手書きイラストを空かんし多様な画像(ラスターデータ)を線と面のデータ(ベクターデータ)に変換してくれる機能で、イラストのデジタルデータ化を行うことが出来る。これによって先ほどairpenで書いたクルマのイラストは、A0版のポスターに拡大してもきれいな線のイラストとして印刷することが出来るようになる。
テキストにしてもイラストにしても、もう一手間かけることになるが、紙をわざわざ用意して手書きし、それをスキャナーで読み取る動作と、普段使っているノートに書くだけでPCに取り込めるのとを比べれば、使い勝手の良さが格段に高いことは、たまにスキャナを使うユーザーならわかるのではないか。
思考のスピードに近づくインターフェイス
PCを使うとき、文字を入力するのはキーボード、機能にアクセスしたり線を書くのはマウス、その結果を愛で確かめるのはディスプレイ、と言うのが基本的な利用スタイルだと思う。タイピングは訓練すればどんどん早くなっていくし、マウスの線描画も慣れていけば上達していく。
それでも僕が紙とペンを使っているのは、いくらタイピングが早くなったとしても、マウスの描画が上手くなったとしても、紙にペンで書くスピードの方が総合的に早いからだ。思い立ったらすぐに書きたいように書く。文字とイラストを織り交ぜるのもソフトを変えたりマウスを持ち替えたりする必要がない。それでも書くスピード、描くスピードに追いつかないかもしれない、とすら思うくらいだ。
airpenストレージノートは、そんな紙とペンに求める思考のスピードをそのまま実現してくれて、しかもデジタル化する道を用意してくれる思考インターフェイスである。読み取り精度は100dpiで、スキャナに比べると決して高くないが、普通のボールペンで書きうる文字サイズからすれば問題ない。なにより、モノにこだわる人にとっても、納得のいく質感を実現してくれている点がうれしい。
だからこその贅沢な要求かもしれないが、僕は普段万年筆を使っているので、出来れば万年筆タイプのデジタルペンが出てこないだろうか? 書き味という好みを叶えてくれるペンが選べない点は、紙とペン派のユーザーとして進化をお願いしたいところだ。
TAROSITE.NETは1997年にスタートした松村太郎のウェブサイトです。コラムやニュースクリップなどの情報発信と、様々なコラボレーションの場として、10周年を迎えました。
松 村 太 郎
TARO MATSUMURA
UPPERWESTSTUDIO
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)
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