ニューヨーク、パリ、ミラノ、そして東京。ファッションの世界では次々にファッションショーが展開される季節である。ケータイの新製品もほぼほぼ同じサイクルでリリースされてきている。だったらファッション性を存分に取り入れてしまおう。SoftBankの20色展開を実現した812SHには、そんな思い切りの良さを感じてしまう。しかしこのファッションケータイの本質は、20色を揃えたカラーバリエーションではないかも知れない。
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812SHのサイズは49mm×97mm、厚さ17.6mm。一般的な薄めの折りたたみケータイのサイズを実現している。しかしボディを見ると、女性が気に入りそうな要素が満点だ。エッジは丸く落とされていて、余計なデザインをボディに施さないシンプルさが魅力。まるでネイルの見本を見ているかのようだ。表面には、中央からミラーのようなアクセントのパーツがあしらわれ、中央には白色の有機ELディスプレイが文字を浮かび上がらせる。
このサブディスプレイの使い勝手も良い。3行表示が可能で、時計や電波強度、電池、メールマークを表示できるほか、メールのプレビューが出来る点も使い勝手がよい。そのサブディスプレイの上部には、小さな着信ランプのLEDが埋め込まれている。着信や新着メールを知らせる際、このLEDは赤・緑と素早く点灯する。ただ単色で光よりもオシャレに見えるこの演出もまた、キレイである。
端末の左サイドには、左から充電端子、赤外線ポート、イヤホンジャック、microSDポート(最大1GB)、ストラップホールが並ぶ。カバーは全てプラスティック製のしっかりとしたモノだ。右サイドにはボタンが並ぶ。左からサークルトークボタン、スクロール用のシーソーボタン、サブディスプレイ表示の切り替えとマナーモード切替を兼ねたボタンが用意されている。背面は2.0メガピクセルCCDにパンフォーカスを組み合わせたカメラと、FeliCa読み取り部のみ。こちらもシンプルだ。
ディスプレイを開く前に、ディスプレイの縁には銀色に光るメッキのパーツが施されており、シンプルなデザインによいアクセントを与えている。ディスプレイは2.4インチQVGAディスプレイが顔を覗かせ、はっきりと大きなボタン類も出てくる。
ボタンは十字キーと決定キーのみがつや消しのメタル調のパーツがあしらわれているシンプルな構成だ。ビビッドピンクの場合、十字キー部分以外のボタンとボディ内側はボディーカラーで統一されており、キートップの文字は白。もしバックライトが点灯した際は、テンキー部分がピンク色に光り、この演出もまた統一感が小気味良い。
ビビッドピンクの場合は良かったが、キートップの色はボディカラーによって白やグレーが用意されていて、色のコーディネートにも気を遣っている。しかし終話ボタンは赤のみ。白や黒いボディカラーの場合は赤いキートップもマッチするかも知れないが、ビビッドピンクの場合は視認性が低い。またグリーンと組み合わせると、ちょっと色のマッチングが悪くなる。
この端末でなんと言っても特筆すべきは、極上のキータッチだ。クリック感はあるが浅めで柔らかなキーは、素早い文字入力が可能だ。予測変換に対応するほか、ポケベル入力にも対応している。テンキーの部分をよく見ると、なめらかに波を打っており、指の腹でとても押しやすい。また縦にキーを分けるフレームが入っているため、爪が長くても引っかからずに済みそうだ。どういう人が使うのか、と言う点もきちんと考えられている点も、ファッションケータイとして押さえるべきところと言える。
ファッションケータイなのだから、多少スペックが劣っていてもデザインを取る、と言う選択肢がある。812SHもデザイン性で選んで損しない端末であることは確かだ。しかし驚くべき事に、この端末に搭載されていない機能を探してみると、これがGPSとワンセグ程度しかないのだ。
SoftBank 3Gの標準スペックを全て搭載しているのが812SHの中身。日本では3Gで、海外ではGSMトライバンドで通信することが出来る。Bluetoothも当然搭載されており、プロファイルはHeadset、Hands-Free、Dial-upNetworking、ObjectPush、File Transfer、Basic Imaging。また4Mbpsの高速赤外線通信が可能だ。
また2.0メガピクセルカメラでは1200×1600ピクセルの静止画の他に、320×240ピクセルの長時間動画を撮影可能となっている。さらにミュージックプレーヤーの機能も、最大で16時間半の再生が可能で、再生中は背面液晶に曲名を表示できる。エンターテインメントへの対応もばっちりだ。
搭載されているコミュニケーション機能もフル装備。Yahoo! mocoa、S!タウン、ホットステータス、サークルトーク、お天気アイコン、ライブモニター、アレンジメール、マイ絵文字、フィーリングメール、S!アプリ、S!キャストに対応しており、テクノロジやコミュニケーションのサービスはきちんとそろっている。
そしてなによりおサイフケータイに対応している点は外せない。2007年春から首都圏の私鉄でPASMOがスタートしてモバイルSuicaをセットアップすれば812SHで乗り降りが可能になったり、セブンイレブンの電子マネーnanacoもケータイでの対応が前倒しとなるなど、よりいっそう便利な使い勝手が広がっていく。
このように端末のおしゃれさだけでなく、テクノロジや搭載されている機能の点でも、きちんと頼れる端末としての側面を魅せてくれる。キレイやオシャレは内面から、という言葉にピッタリと当てはまるじゃないか。
現在810SHや811SHを使っているユーザーに812SHを見せると、カワイイ、オシャレ、といった感想をもって歓迎されるのだが、端末を開いてメニュー画面を出した瞬間、「おや」と雲行きが怪しくなり、「画面がキタナイ」と言われてしまう。シャープ製SoftBank端末の先代、810SHと811SHには、VGAディスプレイが搭載されていて、それに慣れているユーザーからするとQVGAディスプレイの812SHの画面は粗いと感じてしまうようだ。次のキレイのポイントはディスプレイということだろう。
ディスプレイのクオリティはともかく、派手な20色展開が目を引く812SHだが、中身を見ると2007年のケータイのスタンダードをきっちりとおさえている点には驚かされる。つまりデザインで812SHに飛びついたとしても、不便を感じることはないだろう。それ以上に、メールが多用されるケータイ利用のスタイルから考えて、今までのケータイに比べて圧倒的に打ちやすいキーへの満足度は高いのではないだろうか。
安心して自分のカラーを選んで、シンプルかつ充実したケータイライフを。これが2007年春のケータイが出す、われわれの答えかも知れない。
TAROSITE.NETは1997年にスタートした松村太郎のウェブサイトです。コラムやニュースクリップなどの情報発信と、様々なコラボレーションの場として、10周年を迎えました。
松 村 太 郎
TARO MATSUMURA
UPPERWESTSTUDIO
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)
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