DoCoMoの春モデルとしてリリースされた703iシリーズの中で目を引くのは「703iμ」シリーズ。これがまた薄いのだ。「XS」の相性でSoftBankからSamsung製の薄型端末がリリースされてインパクトがあったが、そのお株を奪うのがμだ。薄さで言えばD703iの9.9mmの方が薄いのだが、N703iμとP703iμは折りたたみ型で11.4mm、しかも日本メーカーの製品だ。これは僕が買う折りたたみ型の最後のケータイになるかも知れない。
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N703iμのサイズは103mm×49mm、厚さ11.4mmと、標準的なケータイのサイズでぐっと薄さを極めたことがよく分かる。薄いためか、握った感じはやや幅広く、そして見た目より重たい印象すらあるが、N703iμの重さは約90gと決して重たいわけではない。今までのケータイが厚ぼったくて重かったため、全く別の物体に触れるかのような新しい感触だから、幅が広かったり、重たいという印象を覚えてしまうのかも知れない。
これだけ薄いと端末の剛性が心配なところだが、N703iμは剛性感ばっちり。手元の端末を閉じている状態で、多少ぐらつくのだが、開閉の動作や端末を開いた際のディスプレイ部はぴたっと止まり、しかも開閉の際の「カチッ」という音もきちんとする。これでプッシュオープンだったらさらに便利だと思いつつ、親指を挟むことで片手でもスムーズに端末をオープンできるからさすがである。
端末を閉じた状態での外装をチェック。まずディスプレイの背面パネルにはサブディスプレイは搭載されておらず、ラバーっぽい感触で覆われたカバーには等間隔でディンプル加工が施されている。この中央部の7×7=49コのディンプルには、赤いLEDが仕込まれており、これが端末の顔となっている「マイシグナル」だ。また端末の上端にの3×3=9コはスピーカーが、さらに背面上端の赤外線ポートの真下の1点は着信ランプがそれぞれ搭載されていて、ディンプル加工を最大限に生かしたデザインが小気味よい。
マイシグナルに関しては、着信ランプと排他式ながら、着信の際に点灯させることが出来る。また通話中、クローズ時などの動作にもマイシグナルを割り当てることが出来る。プリセットされているパターンの他、NECのケータイサイトからパターンのファイルをダウンロードすることが出来るため、グループごとに光り方を変えることも可能だ。
左側面にはボタンが3つ、左から音楽再生・文字入力の逆トグルボタン、2コセットで音量やページ送りの上下ボタンが設けられている。端末を閉じた状態で音量ボタンを押すと、マイシグナルで時間を表示してくれる。表示方法は4種類から選択可能だ。また不在着信や新着メールがある場合は、再度ボタンを押すと電話マークやメールマークに光る。
右側面にはイヤホンマイクの端子がヒンジに近いあたりに設けられている。また右側のヒンジがストラップホールの金具になっている。また手前側面にはデータポートが設けられている。N703iμは専用の充電台が用意されていないため、手持ちのFOMA充電器を直接データポートに差し込んで充電する必要がある。この点はミニマルな仕様であるデメリットになっている。
背面を見ると、中央に130万画素CMOSカメラが備わっていて(もちろんパンフォーカス)、その部分が盛り上がっている。カメラを取り囲むように4カ所ネジで止められていて、そのネジがむき出しになっている。そしてカメラの右斜め下にはmicroSDスロットが用意されている。
これだけ薄型の端末でありながら、FOMA703iシリーズとして標準的な機能を押さえているのも特筆すべきだ。同じ薄さのP703iμとの差は、着うたフルへの対応の有無。N703iμは着うたフルに対応し、ミュージックプレーヤー機能を搭載しているため、ヘッドフォンをつなげば音楽ケータイとして楽しむことが出来るあたり、ターゲットとなるユーザー像が伺える。
ディスプレイは2.3インチでQVGAより少し縦長の240×345ピクセル表示が出来るため、メール作成などの機能を使っている間でも時計や起動しているタスク表示がされている。フォントはベクトルフォントが採用されており、5段階のサイズ、3段階の太さどれを選んでもキレイに表示されるのがうれしい。
さてその表示される文字を入力するキーと入力方法について。今手元にはN703iμとSoftBank 812SHがあるのだが、812SHに比べるととても固い印象だ。特に十字キーと決定キーは接近しすぎていてクリック感も薄いため、決定キーを押したつもりだったのに上キーが押されていると言うこともよくあった。固めのキーに片手で文字入力を続けていくのは骨が折れそうだが、漢字の候補も出せるT9入力とポケベル入力が可能。後者は両手で構えて打てば、さほど疲れることもない。当然予測変換にも対応していて、NECのケータイサイトからダウンロードした辞書を追加すれば、候補のカスタマイズも出来る。
文字入力はメールのために書くことが多いだろう。N703iμのメール機能は面白い。以前のNECの端末から「感情お知らせメール」という機能が付いていた。これは相手から届いたメールの中身を解析して、内容を感情アイコンで知らせてくれる機能だった。N703iμではこれを応用して、自分で書いたメールの内容を解析した上で、自動的にデコメールに変換してくれる「おまかせデコメール」の機能が備わった。筆無精だったり、絵文字のセンスがなかったり、デコメールなんて使ったことない、いわゆる「黒メーラー」でも、カラフルなメールをワンタッチで作成できる点はユニークだ。
これに加えて拡張されたデコメールの機能である「デコメ絵文字」や、電話帳お預かりサービス、着もじなどが搭載されている一方で、GPS機能・ワンセグ受信・おサイフケータイ・海外ローミングなどには対応していない。音楽機能と工夫を凝らしたコミュニケーション機能が光るこのN703iμ。搭載された機能、省かれた機能からこの端末のポジショニングが読み取ることが出来るのではないか。
デザインと機能を見てきたが、この端末の最大の特徴である薄型であることについてもう少し触れておきたい。とにかく今までのケータイでは体験し得なかったことが、このケータイでは可能なのだ。
例えば今までのケータイの厚みから考えると、ジーンズのパンツをはいているとき、ケータイをしまうのは前のポケットというよりは、厚みのある財布をしまうようにおしりのポケットに入れたかった。ところが同じようにN703iμをおしりのポケットに入れると、逆にスカスカしてしまってで据わりが悪いのだ。前のポケットに入れるか、シャツの胸ポケットがちょうど良いくらいだ。
あるいは、チェーン付きのカードケースと同じくらいのサイズなので、そこに一緒にくくりつけても良さそうだし、いつも持ち歩いている手帖に挟んでもきちんとボタンが留まるのだ。それにしても、厚みがなくて手に収まらず、せっかくの自前の新品を2回も落っことしてしまったのを後悔している。ラバーっぽい素材の外装がありがたいと思うくらいである。今までと違う薄いケータイを、どのように持ち運べばよいか、少々困惑している様子がうかがえるのではないか。
また昨今のスピーカーはステレオになっていて、ディスプレイの側面に設けられているモノが多いが、N703iμはディスプレイの背面にモノラルスピーカーが付いている。そのためポケットに入れたり裏返して机においておくと、着信音がかなり小さくなってしまう点も、最近のケータイとは勝手が違う。ちなみにバイブレーションは、決して弱くなかったので、きちんとポケットにしまってあれば、着信を逃すこともないはずだ。
しかしそれでも、脱いだコートのポケットで着信していると、見つけるまでに手間取ってしまう。女性がバッグの中にしまっていても、きちんと間口に近いポケットに入っていなければ見つけ出すのは大変かも知れない。このケータイの新しさは薄さというスペックから生まれた、持ち方を考える必要がある点だ。慣れるまでは扱いにくさすら感じるかも知れないが、春になってコートがいらなくなってくると、N703iμの居心地の良い場所が決まってくるだろう。
薄い折りたたみ型がウリのN703iμだが、同時期に発売されているP703iμも同じ11.4mmの薄さを誇る折りたたみ端末。基本的には外観のデザインが最大の差ではないかと見ている。メタリックな外装をソリッドにまとめたシンプルが魅力のP703iμに対して、ラバーのような柔らかめの素材と意味ありげなドット加工がなされているN703iμ。休みの日に街に出るとき、品の良いジャケットを着ていくか、スポーツウエアをカジュアルに着こなすか、というコントラストが、とてもわかりやすい棲み分けを見せてくれている。
N703iμがとても良いバランスで構成されているシティ・スポーティなケータイであることは紹介してきた通りだ。デザインが醸し出す雰囲気がドライブして、世界観を創っているとても良い例だと思う。あわせて必要な機能が、とても薄いボディに盛り込まれている点も、ターゲットの心をうまくつかんでいくだろう。しかしながら、この端末に最も残念だと思われる点は、おサイフケータイが搭載されていない点である。
現状でもミニマルなケータイとしての役割を最大限に果たしているが、ここにおサイフケータイが盛り込まれたら、当面何も困らないケータイになっていたのではないだろうか。それこそ財布やカードすら持たずに、この1台のケータイ、というよりはこの1枚のケータイを持っていれば、通話、メール、買い物、交通機関にも対応できる。身につけるミニマルな生活ツールとして、N703iμの世界観が完結しそうなものだ。
とはいえ、今後にも大いに期待だ。この薄型のボディは向こう3年は利用し続けられる母体になるかも知れない。逆にこのボディに何を盛り込むか、というカタチでバリエーションを展開してくれたら面白い。僕の場合はこれにおサイフケータイが欲しいが、同様にGPSやワンセグ、高感度のカメラ、フルブラウザと無線LANなどを含める事もありえる。
全部共存させる必要はないかわりに、ユーザーが自分のライフスタイルを考えて、機能を選ぶようになると、日本のケータイとケータイユーザーは新しい局面に入る。そんな予感すら感じられるN703iμは、とことん居心地良い端末だと思った。
TAROSITE.NETは1997年にスタートした松村太郎のウェブサイトです。コラムやニュースクリップなどの情報発信と、様々なコラボレーションの場として、10周年を迎えました。
松 村 太 郎
TARO MATSUMURA
UPPERWESTSTUDIO
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)
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