2007.04.13 01:46 JST - ( )

Ashes and snow / Gregory Colbert, ノマディック美術館

Nomadic Art Museum #13
Nomadic Art Museum #13 by TARO MATSUMURA

 ずっと目をつけていた美術展にやっと行くことが出来た。グレゴリー・コルベールのプロジェクト「Ashes and Snow」。この拠点となっているが、写真展と同じくらい興味ある名前だった「ノマディック美術館」である。Ashes and Snowは、2005年3月にNew Yorkで公開され、2006年1月にLos Angeles、そして2007年3月にトーキョーにやってきた。もちろん、ノマディックに、美術館ごと移動してきたのである。

Nomadic Art Museum #03 Ashes and Snowだとは知らずに、お台場をドライブしていたときに、「COSCO」と書かれたコンテナ群が積み上げられて、何らかの構造物になっているのが気になっていた。まさにこれがノマディック美術館だった、と知ったのは今日のことである。

 コンテナが積み木のように積まれていて、木のデッキがそれを取り囲み、白い布のような素材の屋根が風に少し揺れる。これがノマディック美術館の全貌である。とても巨大で、遊牧民が使う移動式住居(パオでしたっけ)の身軽さは見る影もないんだけれど、確かにばらして運ぶにはコンテナという素材はピッタリかも知れない。だって、ちょっと太平洋に出れば、こんなコンテナを積んだ船がごまんと行き交っているわけだから。

Nomadic Art Museum #07
Nomadic Art Museum #07 by TARO MATSUMURA

 そして美術館の入り口から中に入ると、これがまたすごい。なんだかよく分からないうちに、なんだかよく分からないモノに圧倒されて、写真を見始める前に感動に襲われてしまったのだ。すごすぎて、涙が出てきちゃうくらい感動した。

 慎重に記憶を辿ると、お台場の遮るモノが周りになく、春と言うよりは初夏に近い日差しが照りつけるノマディック美術館の、ちょっと柔らかい感触すらするウッドデッキの入口から中にはいると、真っ暗な黒い空間のアプローチを経て、いきなりそこには広大な吹き抜けとまっすぐとした空間が現れるのだ。

 外はあんなに明るかったのに、美術館の中は暗くて、そこに幻想的なスポットライトを浴びた作品が左右に均等に配置されている。正面には映像作品の中で、象と人間が戯れている。その空間に出くわした瞬間、感動に襲われてしまったのだ。

Nomadic Art Museum #04Nomadic Art Museum #04 by TARO MATSUMURA このノマディック美術館は、SFCにもいらっしゃる建築家、坂茂さんによる設計。5300平方メートルにも及ぶ空間を創り出しているのは、152個の貨物コンテナで組み立てられていて、(さっきはいくらでも運びやすいと書いたけれど)現地調達し、現地で返却されるそうだ。確かに規格サイズだろうから、どこで調達してもOKなんですね。

 そして高さは最大17mにもなる屋根を支えているのは紙管の柱群。屋根を支えながら照明器具、そして写真をつり下げるためのバトンとしても利用されている。あれだけシンプルな大空間の中に写真が幻想的に浮かび上がっている演出は、やはりこのAshes and Snowのプロジェクトの一環として作られたノマディック美術館ならではのモノだったのだ。

 とにかく中に入った瞬間の感動は無条件に心を揺さぶられたが、作品を展示するフレーム、ハコからして、作品と一体化してデザインするという手法には、じっくりと感心させられる。もちろんハコだけではなく、作品を焼き付けているのは手漉きの和紙だし、写真作品と映像作品も独特のセピアの色感で統一されている点もまた、完成された表現という印象を強くしてくれる。

 なんだか作品そのものよりも、作品を展示する手法のデザインの部分で感動してしまったので、作品をきちんと受け止めることが出来なかった。これはまたじっくりと見に行こうと思っているけれども、今日見ていた印象では、なんだか人間という生物は自然界の中で不自然なモノだな、と言う感想に至った。いや、もっとじっくり見に行きたいですね、やはり。

・Ashes and snow

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2007.02.01 #06松 村 太 郎
TARO MATSUMURA

UPPERWESTSTUDIO
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)

詳しくは
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