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人生を趣味で変える経験 - 小檜山流趣味人のススメ
by TARO MATSUMURA - 2007.10.01 11:50
僕の古巣である小檜山賢二先生のゼミ、ひとまず今学期が最後の開講になる。それに先だって、学生に向けて小檜山先生が話した言葉は、とても響くモノがあった。それは、人生が趣味で決まってくる、人生を趣味で変える経験を必ずした方が良い、と言うものだった。気持ちも新たに10月1日を迎えるべく、皆さんにお伝えしようと思うし、自分でもきちんと理解を進めたいと思う。
小檜山先生の授業を受けたことがある人は、必ず授業のはじめに「昆虫写真の話」「SFCでは必ずゼミに入って、良い師匠を見つけた方が良い」という話をする。特に「昆虫写真の話」は毎度おなじみの話なので、楽しみにしていたり、暗唱できてしまったりするヒトもいるかも知れない。しかしこれを紹介し続けていたその裏には、趣味と人生、趣味と仕事、趣味と生き方に関する考え方が存在していたそうである。
中学の大先輩でもある小檜山先生の昆虫写真の趣味のスタートは、その中学のイベントにさかのぼる。
毎年、「労作展」という展覧会が秋に開かれ、陶芸をしたり、英語のレポートを書いたり、音楽演奏をしたり、思い思いに好きなことを何でも良いからものづくりする、というイベントだ。思い起こせば、僕は気象が好きだったので、外国人に日本の気象、四季を紹介する小冊子を作って、英語科に賞を頂いたことがあった。
小檜山先生はこの展覧会で、蝶の写真を撮って発表したところから、人生をかけた趣味がスタートしたのだ。
大学時代、蝶の写真ばかり撮っていて、その写真を見た教授に「大学院に来い」と言われて研究畑を歩むことになったそうだ。趣味のつながりで大学院に進学したと言うところから、趣味が人生を決め始める。それまでの大学時代とは違い、大学院になると、自分で考えて、出来ないと自分で勉強して身につける。これは面白いな、と思って、教授の机で寝るほど研究室に籠もって研究にのめり込んだほどだったそうだ。
専門は無線で、研究のために沖縄によく行っていた。当時、沖縄が日本に復帰しておらず、ビザを取るのに45日掛かるような場所だった。復帰前だけれど、沖縄に行けば、日本語の標準語を喋る。無線で日本の放送が流れていたからで、そこから無線への興味を持ったという。
そこで、この言葉「シュミはシゴト的に、シゴトはシュミ的に」が生まれてくるのだと思う。
仕事が趣味のように好きになって、楽しくできたら良いじゃないか。小檜山先生にとって、無線という仕事がそれだった。趣味のようにのめり込んで研究をし、趣味のように情熱を持って楽しく仕事に臨む。その結果生まれたのがPHSだったりする。
一方で「趣味だからと言ってアマチュアで終わってしまってはつまらないじゃないか」とも言う。
NTTの研究所時代、「日本の蝶」を出版して、これがかなり売れたそうだ。本職よりも儲かったんじゃないか、と。しかもいまだに「あの本で写真を始めました」と言われたりする。思い切ってやってしまって良かった、と当時をふりかえる。
本を出すことは、今も昔もライフワークだ。「いつかは出したい」と思って趣味を続けているヒトも多いかも知れない。しかしそれでは本屋に並ぶような形での出版にこぎ着けるのが難しいのもまた事実だ。それはちょっとつまらないんじゃないか。
当時、仲間と2人で出版社に売り込んでいったそうだ。出版社からは他にも何人かカメラマンを追加して、と打診されたが、2人でやるなら出しますと言って2人で出すことになったという。それだけ面白いコンテンツを集めて、それを自分たちの趣味の範囲で行ってしまう。そこには趣味に対して、戦略、思い切り、真剣さを加えて、というと仕事的になってくるが、それでもアマチュアの域を脱してやった達成感は格別だったそうだ。
趣味は実践とフィードバックの繰り返し、爆発することもなく、階段を上がっていくようなモノだ。やってしまうということがまず重要で、いつかはやりたい、では実現されない。
学生時代も、就職してサラリーマンになってからも、週末の2日間を真剣に費やして10年たつと、自ずと一流になっている。生活も趣味に取り組む方向に向けて、仕事も充実してくる。こうして、ダブルメジャーだったり、ダブルキャリアが形成されていく。そして、この言葉である。
「趣味が人生を変える経験は、必ずしておいた方が良い」
大学院に進学したのも、SFCで教鞭を執るようになったのも、元を正せば小檜山先生の昆虫写真がきっかけだった。現在ではワイヤレス技術が注目され、無線の授業やゼミを担当しているけれども。
またこうも言う。「趣味はたくさんあった方が良い」と。1つの趣味が壁に当たったら、その趣味をやめてしまうのではなく、休めばいいのだ。それで時機が熟してきたり、自分が変わってきたりして、また興味がわいたらやればいい。
そのためにも、人生は、今すぐ決める必要がある。今、ちょっと思っていることで決めて、そこに向かって苦労をし、壁を乗り越える。そうすると、自分も変わり、やりたいことも見えてくる。もしかしたら、今やっていることとは違うかも知れない。そうしたら変えればいい。しかし過去にやっていたことは捨ててしまわず、休んでおけばいい。
パワフルに、思い切って、色々なことを自分らしく取り組む。その糧として、心にとめておきたいと思っている。
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