スマートなボディ、維持するのは大変
細身で長身、可愛らしいカラー展開、そして安い価格。iPod nanoは老若男女問わず、幅広く受け入れられてきたiPodである。2007年のリニューアルは、機能的に下位機種であったiPod nanoを、小さなフル機能のiPodに引き上げてくれた。
iPod nanoに限らず、最近のパッケージはジュエルケースに収められていて、とてもコンパクトだ。iPod nanoが表面にあるので、一目で何色のiPod nanoを手に取っているかわかる。この小さなジェエルケースの中に、USB-Dockコネクタのケーブル、ステレオヘッドフォン、既存のDockのためのアダプタ、簡単なガイドが収められている。
ジュエルケースを開けると、やはり透明のプラスティックパーツによって、iPod nanoが挟まっている。製品が中で動かないように、そして背面の鏡面仕上げに傷がつかないように、ちょっと宙に浮いている形でパックされている。これを取り外す方法は、背面にイラストが描かれているので、注意して取り外せば、いよいよiPod nanoを手に取ることができる。
サイズは69.8mm×52.3mm。今までの細身のボディから、高さが減り、幅が増えている。しかしながら厚さ6.5mm、重さ49.2gは、そのスマートさに何度でも驚かされるサイズだ。というより、注意していなければ書類や手帖の間に挟まって視界から消えてしまうほど。
新しいiPod nanoには2インチ、320×240ピクセルを表示するカラーディスプレイが搭載された。これが、ボディの幅が広がった原因である。小さいながら高精細で明るいディスプレイは、明るいところでも暗いところでも、文字や画像をきれいに映し出すことができる。 iPhoneやiPod touchのように、表面すべてがディスプレイ、と言うわけにはいかなかったが、オリジナルモデルであるiPod classicのような画面とクリックホイールの配置になった。
ホールドスイッチ、Dockコネクタ、イヤホンジャックはすべて底面に集められている。端末自体の厚さがDockコネクタやイヤホンジャックの厚さで決められているほど、ギリギリまで底面に穴が空いているようなデザイン。
さまざまな機能や必要な部品を納めて、しかもスマートなシェイプを保つと言うことは大変だ。結構極限レベルまで実現されているのが、今回のiPod nanoのデザインであると言える。
インターフェースが一新
ご存じのとおり、iPod nanoを開封したら、まずMacやWindows PCのiTunesから曲を転送しなければ始まらない。今回は8Gバイトモデル。手元のMacBookのiTunesのライブラリには60Gバイトの音楽やビデオが溜まっている。そのためプレイリストを選ぶなどして、転送する音楽やビデオを選ばなければならない。
このあたりの手順は、他のiPodと同じだし、わからなくてもヘルプを見ながら簡単に転送していくことができる。音楽、ビデオの同期が終わると、iPodには自動的に接続を解除できる旨のメッセージが表示され、いちいちイジェクトボタンをiTunesの上で押す必要なく、すぐに持ち出すことができる。ディスクとして利用する場合はその限りではないが、iPod nanoの容量では、音楽とビデオをめいっぱい詰め込んで使うのがよいだろう。
音楽とビデオを詰め込んだiPodの接続を解除すると、目新しいメニューが現れる。解像度が320×240ピクセルに拡大されたことで、画面の使い方にも余裕が生まれる。トップメニュー、ミュージックやビデオなどの2段目のメニューは、画面が半分に分割され、左側に今までのようなテキストのメニューが表示される。
一方の右側には、ミュージックなら入っている音楽のジャケット写真が、ビデオならサムネイル画像、写真なら入っている写真がそれぞれ、スクロールする。これも、iMovieやiPhotoのスライドショーで設定できるKens Burnエフェクトが自動的にかかる。音楽を選ぶ前からついつい新しいiPod nanoの画面を眺めていたくなってしまう。
ミュージックを選ぶと、目新しい「Cover Flow」がある。iTunesでおなじみのジャケット写真をぱらぱらめくりながら音楽を探すことができる機能だ。アニメーションのビジュアル的にも非常にキレイに動くし、タイトルの羅列だけでは探しにくかったアルバムの検索を助けてくれる。
iPod classic、iPod touch、そしてiPhoneと、iPod shuffle以外のiPodではすべてサポートされることになった。iPod上のCover FlowでiTunesより優れているのは、ジャケットを選んで中央のボタンをクリックすると、ジャケットが裏返り、そのアルバムでiPodに入っている曲を表示、さらにホイールを使えばその曲をすぐに再生できるのだ。
音楽をめくりながら探すスタイルは、画面が小さいと思われがちなiPod nanoでもきっちりと楽しむことができた点はうれしい対応であった。
ちなみに曲を再生する画面も進化した。ジャケットは少し斜めに配置され、てかてかの床面に反射している様子がAppleらしい画像の扱いで美しい。また美しいフォントで曲名を表示してくれるのも見やすい。曲のタイトルは大きな文字表示され、アーティスト名やアルバムタイトルはグレーの小さな文字。そしてもしスターを付けていれば、その数がさらに下に並ぶ。この表示の見やすさ、わかりやすさも上々だ。
ビデオを楽しんでみよう

Music Video Playback - iPod nano #26
さて、iPod nanoの最大の進化のポイントは、ビデオへの対応である。そのために親しまれていた長身細身のシェイプを捨て、より大きく高い解像度のディスプレイを搭載してきた。このディスプレイは非常に視認性が高く明るいため、普段の操作から動画再生の局面まで、きちんとしたパフォーマンスを発揮してくれる。
まずiTunesでは、iPod nanoの設定項目の「ムービー」「テレビ番組」のタブから転送するビデオを選ぶ必要がある。当然小さい容量で、ビデオのライブラリが増えてくればすべてを納めることは難しいだろうし、音楽と共存させることも考えなければならない。プレイリストを作ってそれを同期させる方法もあるが、最新のビデオ、未再生のビデオというオプションがあり、手軽に扱うことができるだろう。
トップメニューのビデオを選ぶと、ムービー、テレビ番組、ミュージックビデオ、ビデオプレイリストのメニューが出てきて、選びやすい。ミュージックの個別選択の画面でもそうだが、ビデオを選択する際は左に正方形のサムネイル画像が並び、1行目にタイトル、2行目に再生時間という2行表示でビデオの内容を確認できる。
選択してからすぐに再生が始まり、途中まで再生していたビデオは途中からスタートする。ボリューム操作や再生したい場所の選択なども、音楽を再生しているときと同じように行うことができる。
iPhoneやiPod touchでは、より大きな画面でビデオを再生することができ、その迫力には目を見張る。だとすればiPod nanoでビデオが再生できても、余り盛り上がらないのではないか、と思われるかも知れない。
しかしこの小さな端末でミュージックビデオやライブビデオ、映画などのコンテンツを持ち歩くことは、ビデオが身近にあっていつでも好きな時に見られる、しかも手の平に収まって余るほど小さな端末で、流麗な映像が再生されている、と言う状況は驚きに値する。
そして、映画だろうがポッドキャストだろうが、このサイズでも十分楽しむことができるだろう。日頃ケータイという比較的小さな画面を眺め慣れている我々からすれば、音質がCDやビデオ並で再生される小さなビデオプレーヤーは、小さくて軽くて、持ち運べる、と言う価値が勝っているという印象だった。
これからはiPodを「眺める」スタイルへ
今まで飛行機の中などで映画を見ようとするときは、飛行機で再生されている映画をおとなしく楽しむか、ノートパソコンや画面付きのポータブルDVDプレーヤーで楽しむくらいしか手段がなかった。となると、何本も観たい場合は持ち運ぶDVDの本数がかさばるわけだ。ところがこのiPod nanoは、音楽を持ち運ぶ感覚で、そのままミュージックビデオや映画をかさばらずに持ち歩くことができる。
今回の旅行の往復の飛行機の中で、テレビで放送されていた5本のアニメと全編・後編計2本のライブビデオ、そして映画を1本を見た。いっぱいに充電して、音楽なら24時間、ビデオは5時間の再生に対応する。
ニューヨークとの往復なら、約1/3の時間、好きな映像を見続けることができるのだ。もしビデオ再生の電池の残りがなくなってきたら、音楽再生に切り替えれば、電池のゲージは復活して、寝ている以外の飛行機の時間はiPod nanoを存分に楽しむことができた。
今までのiPodと違う点は、ビデオ再生をするときだけでなく、音楽再生をするときにも、iPod nanoの画面を眺めながら楽しんでいた点だ。
小さな画面で再生される高精細なビデオ映像だけでなく、ジャケットをぱらぱらめくるCover Flowは音楽との出会いを想いそこさせてくれたり、ビジュアルとサウンドと記憶の連携を作り出したり。日々の違った音楽体験をもたらしてくれる。
新しいiPod nanoに視線は釘付け。そんな日々がまだまだ続きそうだ。
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松 村 太 郎
TARO MATSUMURA
UPPERWESTSTUDIO
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)
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