2007.12.27 10:37 JST - IDEA - OUTPUT - WORK - netnomad.jp (biz design idea nomad photo)
高須賀ゼミ - ミライのドキュメントとビジネス
12月26日に、赤坂見附で「高須賀ゼミ」なるものを開催した。
アメリカでLUNARRという会社を立ち上げた高須賀宣さんが、LUNARRというサービスを紹介しながら、オンラインドキュメントやコラボレーションについて、またビジネスのミライについてディスカッションする密度の濃い場となった。集まったのは25人。僕と同じ世代でビジネスをやっている人から学生まで、割と幅広い分野の方々にお集まりいただきました。
参加した方々のBlogへのコメントが届き始めましたのでリストしておきます。
・field_report_u27: 高須賀宣さんがLUNARR等について語るゼミのログ - メタ情報がついていることこそ、驚きの鍵になっている。ただ、これが何の意味があるのか理解不能。うーん、コミュニケーションって?知的生産って?これまでの枠組みに捕われないで、ただただ、目的達成、プロジェクト完遂(これも枠組みだ)に殉じたときに、LUNARRが何か見えるのかもしれない。
・駆けだし出版プロデューサーの読書ノート: 高須賀ゼメモ(LUNARR、ドキュメント、ビジネス考)
- ルナーと今の仕事の関係は、「ドキュメントパブリッシュのツール」という観点。映画が課題にしてきたことだが、「作品は主語で語れるものではない」これは本にも言えるのではないかと。引用が増える中で、関係性をログ化、可視化する。共著とも違う、創発するテキスト?個人が書くだけでなく、複数の著者がテキストを共有しながら作業を進める。そんなツールとして、ルナーが活用できないか、と考えました(入り口)。
・First Penguin: LUNARR高須賀宣氏が語るWeb2.0とアイディアビジネス
- 高須賀氏は情報サイクルにて人間ベースの情報の在り方をご説明されていたが、では逆に情報ベースの人間の在り方、つまりは情報ベースで人間の共有化が行われれば面白いのではないか、とざっくりではあるが考えてみた。<略>LUNARRのユーザー情報及び行動の蓄積化を逆手に利用した付加サービスとして"情報で人がつながる"SNS的な発想も面白いのではないか、とふと思いついた。
・銀座コミュニティカレッジ: コンセプトメーカー ~ ドキュメント共有の新しい概念に挑戦する
- 高須賀さんからは、ブレークスルーする技法こそを抽出したい。それこそ、今の日本の閉塞感を打ち破るには必要なものだから。<略>まったくゼロからもう一度結果を出して見せたならば、その「思考法」こそが、価値あるものであることを認めざるをえなくなる。おそらく、高須賀さんはそれをねらってアメリカに行ったのではないか。ならば、私たちは、LUNARRを伝道することを通じて「思考法」を日本に広めよう
ドキュメントに裏面をつける
LUNARRというサービスは、表裏一体のサービスだ。
表はオンラインドキュメントとして、閲覧と編集ができる。裏面はそのドキュメントを送ることが出来るメールシステムになっている。最も簡単に言えば、編集したドキュメントを裏返せばすぐにメールでとばせる、と言う仕組みなのだ。最もシンプルに言えば、ドキュメントをローカルに保存して、それをメールに添付しなければドキュメントをシェアできなかったのだが、これを1回の動作でこなすことができるわけだ。
僕がとても共感できた表現は、情報の位置エネルギーという概念。
「ドキュメントを編集してからローカルに保存すると、この共有に関する位置エネルギーはマイナスになる。井戸の中にストンと落ちてしまう感覚。ここから共有して、コラボレーションの題材にするには、まず位置エネルギーを0にして、さらにプラスにしなければ、情報がふくらむサイクルに載らない」(高須賀さん)
つまり現在のドキュメント環境での情報共有にはとてもパワーが必要だし、そのパワーがまめな誰かの負担としてのしかかってきて、とても自然な情報をシェアする環境には昇らないのだ、という指摘には頷けるものがある。BlogもSNSもケータイメールもそうだったけれど、根気があってまめな人がその世界で上手くやっている場面を多々見受けられるのも、情報の位置エネルギーを付加したり復活させられるからこそなのではないだろうか。
この「シェア」という所にも、日本とアメリカに差がある。そう高須賀さんは指摘する。
「アメリカでshareというと、目の前にあるピザを分けるという概念。一方日本でのシェアすなわち共有というと、みんなで1つの鍋をつつくイメージ。日本語の共有は英訳するとcommonに近いのではないか。LUNARRではドキュメントに表裏を持たせることで、このどちらも実現できるようなサービスとして考えている」(高須賀さん)
ここまでで、自分の現在のビジネスでの問題点や不効率な曲面を思い浮かべて欲しい。LUNARRがそれを解決する場面が浮かぶだろうか?
例えば放送作家だけでなく、多くの人がドキュメント作りや承認に関わる放送業界の台本。あるいは人が分散しながら営業をかけている商品の説明資料。サテライトのオフィスがある環境でのオンラインを使った遠隔会議のドキュメント。
こんなシチュエーションを考えてみても、LUNARRが上手く作用しそうなイメージは簡単につく。
さらに言えば、僕としては、何かアイディアを作り出したり、コンセプトを作り出すような場面での知的生産ツールとして使うことはできないだろうか? と考えている。
以前からアイディアを放牧させる期間が必要だ、と言う考え方を持っているのだが、放牧地も冬になると草は枯れてしまう。そのために牧草をストックしておく必要があるのだが、放牧地の草が枯れたとき、そのアイディアをcollaboratorにぽんと投げて、collaboratorから草をもらうようなパターンがLUNARRならできそうな気がするのだ。
そうでなくても、雑談からアイディアがまとまる仕組みに使えるかもしれない。このあたりは今回参加した人たちでLUNARRを使いながら試してみたいところだ。
ソフトウエア市場、エモーショナルな反応
来場者の事前の質問に、なぜ日本ではなくアメリカで起業したのか? という質問が多かった。これに対しては2つの答えがあった。
一つ目は、ソフトウエア市場の話。ソフトウエア市場は米国が40%に対して日本は10〜15%の規模になっており、「○○ならLUNARR」という代名詞的なサービスに仕立てるためには、アメリカ市場を押さえなければならない。それならオフィスはアメリカになければならない、という理由。
二つ目は、やはり新しいモノに対する受け止め方の違いだ。日本でLUNARRを紹介すると、既存の環境からスイッチするコストなどの定量的な、あるいはロジカルな反応しか示してこない。しかしアメリカではもっと素直なかつエモーショナルな反応があり、定性的な付加価値の部分までストーリーを想像しながらの会話になる。やっていてどちらがポジティブにビジネスを進めていけるかは明白だ、ということだ。
また追加で僕の考えとしては、国産でこれだけ新しいモノを見せても、おそらくロジカルにしか頭が働かないし、ステキな事例も生まれにくそうな気がする。一方でアメリカで受け入れられながらステキな事例を作っていくことは、国内市場へのステキさの訴求もできる。ブランドというかイメージの問題に近いかも知れないけれども。
とにかく、僕らとしても、新しいモノに触れたとき、自分とそのものとのストーリーをぱっと思い浮かべて、そのカチを感性で判断する能力を備えたいものだ。ある種の作家性だとかアドリブ性だとか、そういう部分があるビジネスパーソンになりたい、と思ってしまうが、これは日頃からの表現活動がとても重要な訓練になりそうな気がするし、NETNOMADの1つの要素になってくるのかも知れない。
不確実性のハンドリングとイノベーション
さて、最後はビジネスについての話になった。そして高須賀さんの言葉で印象に残ったのはこれだ。
「不確実性のハンドリング」
「既存の大きな企業の新規事業開発部、中小企業の新規事業、完全なベンチャーは、全く環境が違い、完全なベンチャーでしかイノベーションは起こせない。なぜなら、イノベーションとは不確実性の極大化だからだ」とは高須賀さんの経験からの言葉である。
「企業は1000日でDNAが決まる、というのは松下の考え方だけれど、これは当たっていると思う。Googleはいつまでたってもキーワードサーチの会社だし、MicrosoftはいつまでたってもOSとビジネスソフトの会社。この1000日の間でのコンセプト作り、ステキなコンセプトを作り上げる部分がその会社の善し悪しを決めてしまう」(高須賀さん)
「この期間に起きる不確実性に対する投資は、既に動いている企業には採れないリスクで、ハンドリングはかなり難しい。コンセプトメイキングから戦略のフェイズに移り、実行のフェイズへと進むにつれて、不確実性が減り、そこに投下するリソースが増えていく。LUNARRのコンセプトは1年間かけて出来上がったもので、3日の合宿だとか20日の研修でコンセプトが出来上がるとはとうてい思えない」(高須賀さん)
練りに練られたコンセプトから出来上がったLUNARRは現在α版で2008年2月にβ版に昇華する。セマンティックWebの具現化、ドキュメントやコラボレーションにまつわる不便の解決をモットーに、デジタル情報の再定義を目指すLUNARR。
「○○といえばLUNARR」の○○は、まだ我々が見たこともない何らかなのかも知れない。少し早めにこの○○とは何なのか、考えてみることは、なかなか楽しい課題なのである。
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松 村 太 郎
TARO MATSUMURA
UPPERWESTSTUDIO
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)
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