COLUMN

1つのネットを実現するMobileMe - iPhone and Keitai

by TARO MATSUMURA - 2008.06.30 23:55

 米国時間の9日、アップルの開発者向けイベント「WWDC 2008」にて、かねてより登場が噂されていた第三世代通信方式(3G)に対応した「iPhone 3G」が登場した。

 デザインや詳しい機能などについて製品が日本発売となる7月11日以降、いち早くご紹介するが、今回は日本のケータイとは違う魅力を作り出す「MobileMe」について触れたい。

 まずiPhoneがソフトバンクモバイルからリリースされることは、「予想外」だった人も多いのではないか。僕はかねてより、ビジネス的にもサービス的にも、ソフトバンクから出る、と過去の記事にも書いていたし、何を隠そうドコモからソフトバンクに仕事用のケータイを変えて待っていたくらいで、予想が当たってホッとしているところだ。

 発売は7月11日。世界発売のタイミングで日本でもソフトバンクショップの店頭に並ぶ。初代iPhoneの販売場所は、オンラインのApple Store、リアル店舗のApple Store、ケータイショップの3チャネルだったが、今回は世界中で、ケータイショップの店頭販売に限られるようだ。

 これは同時に発表した、8GBモデルで199ドル、16GBモデルで299ドルという衝撃的な価格にも関係している。ユーザーの店頭販売価格を抑えて、そのかわりケータイ会社とは2年間の契約としてもらう。そしてアップルは端末代金をケータイ会社から徴収する。

 ちょうど、日本で長らく続いてきた端末の販売奨励金のモデルを、端末メーカー(すなわちアップル)に有利な条件で変形させたような仕組みだ。

 日本のモデルに近い要素はこれだけではない。iモードのように、iPhone SDKでiPhone上でのソフトウエア開発環境を用意した上で、できたソフトを「App Store」で配布もしくは販売してもいい、という仕組みも用意している。

 とはいえ、ケータイ端末メーカーが端末をオープンにして、端末販売後も収益モデルを保持する、という点は、やはり日本のメーカーからすれば考えられないことだろう。ケータイのビジネスサイドでの変化は、ドラスティックなものだ。

 では、われわれ一般のケータイユーザーからすると、どうだろう?

 iPhoneは世界で同じモデルが売られることになるようだ。ということは、日本固有のケータイの機能、つまりソフトバンクで言えば、Yahoo!ケータイやアドレスが「@softbank.ne.jp」のケータイメール、絵文字、デコレメール(デコメール)、おサイフケータイなどには基本的に対応しないことになる。

 ソフトバンクから出ている端末には、スマートフォンの「X」シリーズがある。Windows Mobile機やノキアのSymbian OS端末などは、かなり海外のスマートフォンと近い仕様で売られている。

 これらの端末では、ハードの作りを変えなければいけないおサイフケータイなどは使えないが、ケータイメールや絵文字など、ソフトで工夫できるところには何とか対応している。そのためiPhoneでも、日本のケータイに合わせたなんらかの対応がなされるかもしれない。

 日本固有の機能に合わせない場合、iPhoneそのものの魅力を落とすことはないが、日本でメインのケータイとしてiPhoneを選ぶことは難しくなるかもしれない。そこには、日本独自に構築してきた「ケータイ」によるネット利用が存在しているからだ。

 慶應大学SFCの学生に話を聞くと、「メールしておくから」と言うと、パソコンのメールを送ることを意味する。しかしSFC以外の大学生に聞くと、圧倒的にケータイメールを指すことが多い。

 このように、日本で一言に「メール」と言っても、ケータイメールとPCメールという2つの「メール」が存在しているのだ。メールだけでなくアドレス帳やウェブにもパソコン用とケータイ用が存在していて、別々に育ってきた経緯がある。

 しかしアメリカを始めた海外には、そもそも「ケータイウェブ」だとか「ケータイメール」というものはなかった(SMSがケータイメールといえばそうかもしれないが)。そんな国で生まれたiPhoneだ。iPhoneで扱うのはケータイメールやケータイウェブではなく、パソコンで使うメールやネットを持ち出す、という感覚になる。

 iPhoneと同時に発表された.Macの進化版、MobileMeは、デスクトップでも出先でも、「同じひとつのインターネット」を便利に使うためのウェブサービスという位置付けになる。

 auは、au oneのメールなどの各種サービスで、ケータイの情報をウェブ上でバックアップする、という仕組みを作っているが、やはりメールやウェブにおけるケータイとパソコンの関係性を変えるものではない。

 ケータイメールでは当たり前のように新着メールは勝手に端末に届いてくれて便利だが、iPhoneとMobileMeのメールを組み合わせると、PCメールのアドレスでもメールを端末までプッシュしてくれる。また、スケジュールを設定したら、瞬時にデスクトップやウェブアプリケーションのスケジュールにも反映されるし、アドレス帳だって瞬時に同期してくれる。

 iPhoneやウェブブラウザ、MacやPC、どこで更新しても、常にどこでも最新の情報で統一される。ケータイとPCという区分けはない、ひとりの生活にはひとつのデータベースがあればいいというシンプルな考え方で、その利便性を追求したサービスがiPhoneとMobileMeの組み合わせだ。

 MobileMeが年間99ドルという少々高い価格で提供される点、そして日本のケータイが作っているライフスタイルとはアプローチがまったく違う点で、上に描いたスタイルをありがたく受け入れるユーザーが日本にあふれ返るとは思わない。しかしながら、パソコンを普段から思い切り使いこなしているユーザーが持つケータイとしては、相応しいサービスと言えるのではないか。

 これまでケータイとパソコンという端末によって器用にネットを使い分けていた日本では、よりシンプルにひとつのネットを複数の端末で快適に使えるようになる。個人が持っている情報を端末の垣根から解放してくれるMobileMe。われわれ日本人にとっては、モバイルで使う「ネットの自由さ」の合い言葉になるかもしれない。

このエントリーを含むはてなブックマーク twitterでつぶやく deliciousにブックマーク

Twitter Update
    follow me on Twitter
    Trackback
    • URL:
      http://upwest.org/mt/mt-tb.cgi/9253