2008.07.17 16:22 JST - -

G8でサステイナビリティは語られたか? ムラサワ・レター公開イベント

MURASAWA yoshihisa - castalia fusen update at Apple Store Ginza

 2008年7月3日に行われたcastaliaのApple Storeイベントで、大人気のサステイナビリティPodcastである『TALKSHOW ムラサワ・レター』の公開イベントを行った。そのときの聞き手を担当しています。そのときの模様をテキストでフォロー。ちょっと遅くなりましたが、まだ音声で聞いていない人は、ぜひこちらからお聞きください。

石油と共に歩んできたG8

 「もともとは、1974年に行われたG5(Group of 5 Countries)というのがスタートでした。1973年に起こったオイルショックで、今とよく似た状態、つまり石油が超高騰してしまいました。1バレル4ドルから20ドルまで上がったんです。原因は中東戦争でした。石油に関連した生活物資がなくなり、大騒ぎになったのは今でも覚えています。日本では戦後初めてのマイナス成長になりました」(村沢さん)

 そして翌年にはイタリアが入り、フランスでG6サミットが開催されるに至ったそうだ。そして今回も、目下の問題は原油高で、世界中で対応に追われ、あるいは対応しきれないという声も上がり始めている。

 「中国やインドが高成長で石油を使い始めています。それから石油の枯渇が見えてきています。当時は戦争が原因で一過性のものでしたが、今回はより長期の高騰になりそうで、現在の方が状況は悪いのではないかと見られています」(村沢さん)

私がG8サミットに関係ある理由

MURASAWA yoshihisa - castalia fusen update at Apple Store Ginza さて、東京大学でサステイナビリティ学の研究や認知を進める村沢さんがなぜG8サミットに関係があったのか。今回を含めたG8サミットの構造についてうかがった。

 「G8サミットにはサテライト会議、関連会議があります。もっとも有名なのが財務大臣会議。これまで日本は大蔵省だったため、長らく蔵相会議と呼ばれていました。また近年では環境相会議など、たくさんの会議があります。今年から東京大学が提唱し、文部科学省と共に大学サミットを開催することになりました」(村沢さん)

 大学サミットは場所柄、北海道大学がホストとなり、日本からは東京大学、慶應義塾大学が中心になっている。テーマは「グローバル・サステイナビリティと大学の役割」。政府が関係するオフィシャルな会議ではないものの、宣言文をとりまとめた上で、福田総理大臣に手渡しに行ったそうだ。

 「私のバックグラウンドは、経営コンサルティングでした。そのため例えばバイオ燃料は食糧問題とかぶるから太陽光発電にしなさい、という踏み込んだ提案までこぎ着けたかったのは山々でした。しかしながらもう少しジェネラルな、大学はお互いに情報発信をしながら、世界に、世の中に貢献しましょう、という宣言になりました」(村沢さん)

 G8は8カ国だったが、大学サミットは34大学が世界中からオープンに集められた。そこで、大学の総決起集会という位置づけになったという。

テーマは環境問題、だったはずだが

 さて、今回のG8サミット、日本のメディアでは事前からテーマは環境問題である、との報道が盛んに行われてきた。開催国である日本がどのように世界に主導権を発揮するか、という戦略としても試されていたのだが、実際はどうだったのか。

 「もともと今年は環境問題を中心に据えよう、というカタチで準備していました。とはいっても、私が現在のサステイナビリティ学の教授に就いてG8サミットに関わることになるまで、サミットって毎年行われていたっけ? という程度の認識でした。毎年行われて、今年で34回目になるのですが、昨年ドイツ・ハイリゲンダムで行われたG8サミットでは『美しい星50』という提案をするなど、環境問題が議論の中心になりつつありました」(村沢さん)

 「しかし今回はどうも日本の思惑通りにはなりませんでした。というのも、アメリカ経済の低迷が非常に鮮明になってきたこと。新車の販売は14%減と冷え込みが目立ち、サブプライムローン問題が予想通りつぶれてしまった。その背景には原油高、食糧高といった問題があります。アメリカ人はイメージと違って余裕がなく、金持ちほどケチなので、経済が不安になるとすぐにお金を使わなくなります」(村沢さん)

 長期的な問題である環境問題も重要ですが、目下の経済問題についても非常に神経をとがらせる必要があったのだ。そのほかにもアフリカ問題、食糧問題、原油に絡む経済問題など、山積する問題とのバランス勝負になってしまったようだ。

 「今年の初頭に行われたダボス会議にも参加してきたが、アル・ゴア氏も含めた大きな流れは『環境ダボス』になるはずでした。ところが今回のサミットと同じパターンで、経済問題が先に語られることになってしまいました。そんな世界情勢の中で比較した場合、経済の状態が『まだ』良い方だからあまり危機感がないのかもしれませんが、長期の課題に目が向かなかったのが現状です」(村沢さん)

燃やさない文明

Bridge 「まず参加国がこれでよいか、という問題。中国、インド、ブラジルまで入れる必要があるかもしれません。彼らが参加した上で、先進国は本気になって現在出し過ぎているCO2を削減する必要があります。地球のCO2吸収能力を考えると、世界人口で平均した場合の1人あたりの排出量は年間2tに押さえる必要がありますが、日本は10t出しています。福田総理が語った60〜80%のCO2排出量削減は、単なる目標値ではなく、日本人の世界に対する責任を達成するための数字でもあります」(村沢さん)

 村沢さんが語るCO2排出量を1/5にするという目標は、ちょっとやそっとでは達成することが出来ない非常に高いハードルだ。ビジネススキームや工業製品が変わること以上に、我々の生活がCO2排出フリーな状態にならなければ、まず達成することが出来ない数値になる。そのために村沢さんは『燃やさない文明』の必要性を指摘します。

 「CO2は化石燃料などのモノを燃やすと発生する、という原則があります。人間は明かりを採ったり、暖を採るためにモノを燃やし始めました。昔の明かりはたいまつやろうそくを使っていたため、照明からもCO2が出ました。しかし現在は電気を使っているので家庭からはCO2は出ません。しかし石油ストーブなどを使って部屋を暖めれば、家庭からCO2は発生します」(村沢さん)

Volkswagen EcoRacer 12 「現代では自動車はガソリンを燃やして走るためCO2が発生します。これが電気自動車になれば、自動車が走る現場からはCO2が出なくなります。ところが発電の過程で火力発電所はCO2を排出します。それでも電気自動車が有利なのは、自動車が燃やして得るエネルギー量よりも、火力発電所で電気を作る方が遙かにエネルギー効率がよいからです。約1/3の排出量に抑えられます」(村沢さん)(写真はVolkswagen社のエコスポーツカー)

 またコスト面でも有利だそうだ。現在ガソリンが200円に近づいているが、東京から大阪まで普通乗用車行こうとすると、ガソリン代だけで1万円ほどかかってしまう。しかし電気自動車なら1000円〜2000円の電気代で済む。軽自動車なら数100円まで安くなると言う。

今後のG8サミットとサステイナビリティ

 「東京大学は昭和シェルさんと仕事をしていますが、ガソリン社会ではないビジネスを考えていて、充電スタンドに転換していこうか、と本気で考えています。ところが家庭にガソリンはないのですが、電気はあります。充電の時代は家が中心になるため、ビジネスとしてどうするか、もう一ひねり必要です」(村沢さん)

 「ただでさえも食糧危機が訪れている昨今、これと完全にぶつかってしまうバイオ燃料の動きは封じるべきです。環境問題に熱心ではなかったアメリカがいいわけとして取り組んでいた側面もあったため、今後中国やインド、南アフリカなどが会議に参加してくることで、しっかりとNoと言えるようになるはずです。これと同時に、電気社会なら、どのような構造転換が必要か、G8として示していく必要があります」(村沢さん)

 我々としても、今後のサミットを見守るのではなく、実生活の知恵からG8に知識を提供するような気負いでビジネスやライフスタイルの提案を行っていく必要がある。割と時間的な余裕がないところまで来ている点は、認識すべきかもしれない。

Related Article

Comments

TAG


    • RESOURCE

      G8でサステイナビリティは語られたか? ムラサワ・レター公開イベント

      castalia: ムラサワ・レター

      AD

      TRACKBACK

      • URL:
        http://upwest.org/mt/mt-tb.cgi/9268

      AD

SEARCH



tokyonews

AUTHOR

TAROSITE.NETは1997年にスタートした松村太郎のウェブサイトです。コラムやニュースクリップなどの情報発信と、様々なコラボレーションの場として、10周年を迎えました。

2007.02.01 #06松 村 太 郎
TARO MATSUMURA

UPPERWESTSTUDIO
慶應義塾大学SFC研究所 上席所員(訪問)

詳しくは
taromatsumura.net

FEED

tarosite.net: ATOM
tarosite.net: RSS 2.0
tarosite.net: RSS 1.0
はてなブックマーク
technorati.com