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B to D - 稲蔭先生に聞く、KMDの魅力
by TARO MATSUMURA - 2008.09.17 10:43
慶應義塾大学は今年150周年を迎えている。デジタルメディアコンテンツ統合研究機構(DMC)などの活動を経て設立されたメディアデザイン研究科(KMD)は、150周年記念事業の1つとして新設された大学院だ。僕が日本で唯一憧れる大学院である。
先日、といってもすでにかなり遠い先日ですが、その大学院の委員長である稲蔭正彦先生にお話を伺う機会があった。
「最近、ビジネススクールに変わって、デザインスクールへの注目が高まっています。昨今の説明が難しい、ビジネス上必要なデザインのセンスを学ぶというか磨くような場所が、大学院のマスターコースとして注目されています」(稲蔭先生)
B schoolではなく、D schoolがビジネスに必要なピースとして着目されており、Stanford大学にも「d.school」という赤くてかわいいウェブサイトでdesign thinkingによるリーダー育成という、ちょっと今まででは理解することが難しそうなテーマを掲げている。ちょうど、Business → DesignというB to Dのシフトを示すかのような状況。間にあるCはConsumerよりはCultureがあたりではないだろうか。
KMDの構想を打ち立てるときに、リアルプロジェクトを実施することを念頭に考えていたそうだ。デジタルコミュニケーションとデザインによるイノベーションが目立つこの時代に、ビジネスに近い領域での直接世の中にエフェクトするようなフィールドで教育が出来ないか。新しいけれどもまさに実学をリ・デザインするような慶應らしいコンセプトだ。
しかし僕の出身校であるSFCや慶應大学にもビジネススクールが存在する。ここにぶつからないようなポジショニング、ということで「メディアデザイン」という言葉になったそうだ。
「SFCはリベラルアーツの世界。分野横断的に学生が自分のテーマを作って醸成させることが求められていた。その行為自体に意味をおいていた。しかしKMDは新しいモノを作ることによりフォーカスしている。そこで、新しいモノを作るために必要な4つの力を身につけてもらうことが必要だ」(稲蔭先生)
その4つの力とは、以下の通りだ。
・デザイン的な判断力
・テクノロジに対する知見
・リーダーとしてのマネジメント力
・ポリシー、ライツ
これら全てをマスターし、そのうちの1つのスペシャリストになることが求められる。そしてアウトプットはビジネスやソーシャル・レスポンシビリティに対するアプローチとなる。
「伝統的なビジネススクールのスタイルとは違うが、なかなか数字やケースで表現しにくかった人が楽しいと思う瞬間の価値、おもてなしの心、わびさびといった日本風のサービスについてのビジネス上での価値付けが、実は現在のビジネスにはとても重要で、ここがメディアデザイン大学院のカバー領域でもある」(稲蔭先生)
この背景には、Culturel IndustryやCreative Industryといった、資源を持たない国がいかに世界の中で生き残っているか、という知恵を育てることに直結している。そして日本では遅れているが、イギリスを手本にして、オランダ、フィンランド、スウェーデン、フランス、シンガポールなど、東南アジアの国々、ヨーロッパの小国ではすでにこれを実施して成果を上げている。
とても魅力的なカリキュラムに見えるが、じつは非常に危機感を持った取り組みでもある。
「価値判断をデザインすることを、世界中の人が集まる環境で、あるいは世界に出て行って体験してもらう必要がある。そこで積極的に人材交流を行っているし、すでにそういう現場で活躍してきたバイリンガルのリーダーを教員として集めた。エンターテインメント、食、ファッションなど、衣食住に対する価値付け、そして未来のデザインが育つことが求められる」(稲蔭先生)
まだ始まったばかりの学部であるが、とてもシンプルで情熱的な場になっている。「B to D」というキーワードが当たり前になったとき、その先を作るのもKMD担っていることをついつい期待してしまう。
Author
松村太郎 Taro Matsumura
ジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ビジネスブレイクスルー大学講師。テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニング、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。近著に『タブレット革命』『スマートフォン新時代』など。 read more & contact
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