COLUMN

Push Talk - 音声定額だけじゃないケータイの拡張

by TARO MATSUMURA - 2005.10.19 17:53

 DoCoMoがFOMA 902iシリーズから、IP電話の一種であるPush To Talkを利用したサービス「プッシュトーク」に対応する。これに合わせて「カケ・ホーダイ」という、月額1050円でプッシュトークがかけ放題になる定額プランも合わせて発表された。カケ・ホーダイに申し込まなくても、902i同士であれば1回5.25円ででプッシュトークを使うことが出来るようになる。以前のエントリーで書いたように、DoCoMoの音声定額はPTTで実現することとなった。

・NTTドコモ: プッシュトーク
 http://www.nttdocomo.co.jp/service/pushtalk/index.html


音声通話定額とは違う

 ただ、音声通話定額、とは少し違う気がする。トランシーバーを使ったことがある人なら分かるかもしれないが、「○○○○、どうぞ」と話しますよね。プッシュトークもこれと同じ事をする必要がある。つまり全二重(full duplex)の電話の通話ではなく、半二重(half duplex)、つまり双方向で音声を送り合うことが出来るが、同時に通信することは出来ない。そのため「音声通話が定額制になった」とは言い切れない。

 しかし日本で誰も使ったことがないケータイでのPTTを、「音声定額」として「音声通話定額」と同列に扱ってしまえば、WillcomやVodafoneのキチンとした「音声通話定額」の優位を奪ってしまえる。しかしこれはマーケティング上の話であって、実際に使うとやっぱりプッシュトークは「音声通話定額」ではなくて「音声定額」なのだろう。もっと言えば「音声SMS定額」「音声メール定額」というイメージでとらえても良いかもしれない。


新たなコミュニケーションスタイルの可能性

 ではプッシュトークはネガティブにとらえるべきなのか? 僕はそうではないと思う。通話かメールか。このチョイスを長年続けてきたメディア選択に、新しい音声メールというモードが追加される、ととらえることが出来る。このトランシーバー的な音声のやりとりに慣れる必要があるが、このやりとりに、また新たなコミュニケーションのスタイルもしくはカルチャーが生まれてくる可能性がある。

 例えば留守番電話。30秒足らずで用件を伝えて相手に聴いてもらうという一方向のコミュニケーションで、返事について即時性を求めるわけではないけれど、プッシュトークに載せる音声に近いモノがあるかもしれない。あまり飛躍しないアイディアで行けば、5秒程度で済むような音声通話のリプレイス。下のような例を挙げてみよう。

  子「今から帰る」
  母「ご飯はいる?」
  子「もうたべちゃった」
  母「気をつけて帰ってきてね」

 このやりとりに必要な通話料は子10.5円、母10.5円の21円ということになる。ここで既に今までの音声通話と違っているのは、コミュニケーションを起こした子供だけでなく、それに応じた母にも通話料が発生している点である。日本では電話をかける方が通話料全額を負担する仕組みが基本になっているが、その概念が、ケータイメールのパケット代のように、音声通話でも崩れることになるのだ。契約しているプランにもよるが、折半になることによって、今までよりも連絡を安く済ませることが出来るようになる人もいるかもしれない。

 プッシュトークが普及していくと、上の母と子のやりとりはこうなるかもしれない。

  子「今から帰る。夜ご飯は○○くんと○○を食べました」
  母「わかった、気をつけて帰ってきてね」

 一言に5.25円かかるので、逆に一言にどれだけの内容を詰め込むか、という勝負が発生しそうな気がするのは考えすぎだろうか。子は母親にプッシュトークを送る前に、「この時間なら夜ご飯の有無を聞かれるんじゃないか」と推測すれば、5.25円分少なく母親に声を届けることが出来るようになる。ケータイメールと同じような行ってこいのメッセージングでありながら、1歩止まって何を言うかをキチンと考えてから飛ばすようになったら、日本人のスピーチも上手くなるかもね。ケータイメールだってそうやって考えて送る方が良いに決まってるけれども。


同報通信の面白さ

 最近うちの家族では、「家族オールCc」のケータイメールが飛び交っている。弟や僕の端末ではFOMAでもチャットメールに対応してあるため、チャットメールのメンバーを両親兄弟全て追加してあり、家族の誰かに連絡を取るときにはそのチャットメールの画面からメールを送っている。夕食の事や出先で待ち合わせるとき、お互いのプレゼンス(状況・現在地)をやりとりしている。

 例えば僕と弟の「今どこ?」「駅に着いた」と言ったやりとりを両親も含めて共有することになり、時々母親が「○○買ってきて」ってな具合で急な買い物を頼みに割り込んできたりする。とりあえず同報通信ということで連絡をいちいち合わせる手間がないので便利なのと、割り込みのコミュニケーションに意外な面白いさを覚えてしまい、もうやめられない。

 プッシュトークは自分も含めて5人でやりとりをすることが出来るので、この同報通信の音声版を組むことが出来る、と言うイメージで間違ってないのではないかと思う。メールであれば、チャットメールだけじゃなく、メールグループで同報通信のリストを組んでおけば、すぐに同報メールを打つことが可能になる。mova以外のケータイ(DoCoMo、Vodafone、au、Willcomなど)ならヘッダにある2つ以上の宛先もキープされるので、待ち合わせに来る人をCcに入れてメールを打って、それに返事を返すときに「全員に返信」とすれば同じ事が出来るようになる。

 メールでやっていた同報通信、もしくはチャット雨状態を音声で出来るようになったらどうなるのだろう。こればっかりは体験してみないと分からないので、早くやってみたいですね。ただ相手が必要なので、早く902i仲間を作らなければならない。これはコミュニケーションツールならではの悩みと言うべきか。


ついにくる電話帳イノベーションとプレゼンス機能

 プッシュトークには拡張機能として「プッシュトークプラス」が設定されている。これはメンバー最大1000人まで登録可能で200の通話グループを組むことが出来るプッシュトークの拡張機能で、普通のプッシュトークは最大5人までの同時通話だが、プッシュトークプラスではこれが20人に拡張される。半二重通話であることは変わりない。またネットワーク電話帳が用意され、メンバーリストをメンバー間で共有することが出来るようになるそうだ。そのリストの中で200まで通話グループを組める、ということだろう。

 これってFOMAを使ったモバイル内線システムみたいな使い方になりそうですね。そのようとを思わせる機能がもう1つ入っており、それはプレゼンス機能だ。ついに来た、という感じがしますね。つまり「会議中」「移動中」という現在のステータスをメンバーが1人1人指定すると、(おそらくだけれど)そのネットワーク電話帳にプレゼンスが表示されて、他の人が見られると言うことになるのだろうか。電話帳のネットワーク化とプレゼンス機能の導入をPTTと組み合わせたというのは、日頃のインスタントメッセンジャーでのプレゼンス&チャットのコミュニケーションを考えると自然ですね。

 プッシュトークプラスは月額2100円で、メンバーをホストする人が管理料として10500円を払うことになる。ビジネス用途ということだが、ネットワーク電話帳の概念がコンシューマー向けに降りてくるのはいつになるだろうか。


互換性の問題

 結構魅力的な新しいコミュニケーション手段であるプッシュトーク、僕が一番気にしているのは互換性の問題だ。つまり例えばDoCoMoが提供するプッシュトークと、auも提供して来るであろうプッシュトークの間に互換性があるかどうか、と言う点である。そもそも携帯電話が初期に普及したのは、一般加入電話と通話が出来るようになっているからだし、ケータイメールがこれだけキチンと一般化したのもインターネットの一般的な電子メールに対応してキャリア間を超えるだけでなくPCからの送信も可能にしたからだ。

 だとすればプッシュトークはどのようなオープン性を確保していくことになるのだろうか。これは、難しい交渉などがあるかもしれないが、しかし重要なポイントであると思う。


Author

松村太郎 Taro Matsumura

Taro's Portraitジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ビジネスブレイクスルー大学講師。テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニング、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。近著に『タブレット革命』『スマートフォン新時代』など。 read more & contact

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      2005年10月20日 00:07 From 空を滑る人 - 本日、DoCoMoよりFOMA 902iシリーズの開発と、新しいサービス、プッシュトーク、 について