TAROSITE.NET: COLUMN
Surroundings - Cafe Tools
by TARO MATSUMURA @taromatsumura 2004.07.09 09:06
SFC稲蔭研究室で「Surroundings - Cafe Tools」の実験が行われているとの事で参加してきた。同じ部屋の配置に並べられた2つの椅子とテーブル。実験ではまずここで会話を10分して下さい、と言われる。nobuさんと参加したんだけれど、まあいつも通りの会話をしていた。そして次に通されたのが、Cafe Toolsの椅子とテーブルとランプが先ほどと同じように配置された部屋。また同じように会話をしていくんだけれど、幾分違った感覚を覚えた。
Cafe Toolsの椅子と机とランプはこんな感じだ。赤いクッションが廃された、少し包み込むような格好のゆったりとした椅子、赤いアクセントがある机、頭上にある袋のようなランプ。照明の具合なんかも夕日と相まってなかなか素敵だ。

早速座ってここで話し始める。まず頭上のランプがきゅーっとしぼみはじめて、またゆっくりと丸く開いていく。そんな動作を繰り返している。またソファからはバイブレーションが伝わってくる。ランプとソファからのインタラクションはこの2つのシンプルなものだ。
ところが会話を進めて行くに連れて、その振動の伝わり方やランプの動きが変化していく。変化していくと言うよりは会話のトーンによってスピードが変化していく感じ。相手の声が振動となってソファから伝わってくる感覚と、それに僕が答えるとランプが開いたりしぼんだりする。
その環境の動きによって、会話のテンポが速まったり、ものすごく示唆に富んだ発言が出てくるような印象を覚えた。明らかに普通のソファとテーブルの部屋での会話以上にテンポが速く、情報量も多い、密度の濃い会話になっているんじゃないか、と感じた。ロード競技のペースメーカーみたいな役割に見える。
しかしながらその環境の動きを作っているきっかけは自分たちの会話だと思うと、自分たちの会話と環境が絶妙なインタラクションをしながら、その密度の濃い会話を引き出す場を作り出しているという事に気付かされる。とてもエキサイティングな会話の場だった。
「電車の中で打ち合わせをしている感覚だ」と実験が終わった後にnobuさんは評していた。「ランプの動きが駅で開閉するドア、伝わってくる振動は電車の振動のように感じられて、電車で座って話している時に、相手があと何駅かで降りてしまうから話さなきゃ、というシチュエーションが浮かんだ」とは上手く言い当てていると思う。
実験の普通の部屋ではいつも通りの会話をしたと言う印象が強かった分、Cafe Toolsが配された部屋での会話は普段とは少し異質なものであるという受け止め方をしていたと思う。示唆に富んでいて、少し攻撃的で、会話に使う頭の回転量が少し早い状態。これが10分キープされてくる。1時間も座っていたらぐったりしてしまうかも知れない、とも思ってしまった。
この実験をホストしているのが稲蔭研究室の博士課程の植木淳朗さん。Surroundingsは都市空間で身の回りに存在している繋がりを気付かせて、コミュニケーションを生み出すための仕掛けを提案しているプロジェクトで、その中でもCafe Toolsはその時その場にいる人達を感じるというのがコンセプト。今回のnobuさんと僕の会話も偶然の産物でありながら、それがCafe Toolsによって深まって一つの答えに達していた経緯を見ると、この仕掛けは成功しているように見える。
「次はオフィス環境に適用していきたい」と植木さん。僕が昨年のMoblogging Conferenceなどで聞いたOn Sightという概念の延長上に存在している話だとおもうし、これがより洗練されてケータイに入ってくるような、より日常的な新しいコミュニケーションツールになっていく可能性だってあると思う。
とにかく“体験できた”というのがものすごく大きかったと思う。今後また議論・コラボレーションさせて頂ければ、と思っています。