COLUMN | MacSPiCE

Barに落ちてたiPhoneはそのままのデザインか? - Appleのものづくりの凄み

by TARO MATSUMURA - 2010.04.30 23:57
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 MacBook Proを新調して1週間たった。まあ、OSはMac OS X 10.6 Snow Leopardだし、漢字変換はATOK 2009だし、iLifeもiWorkもMicrosoft Officeも、そのほかのオンラインソフトウエアも、今まで通りなので、変わったのは本体のサイズとデザイン、広い画面、パワフルなCPUくらい。しかし新しい本体には驚かされる。

 このボディでついつい触ってしまうのは、ディスプレイを開けるためのへこみ部分の角。非常に尖っておそらく日本のメーカーだったら「危険だ」「ケガをする」と許さないであろうが、Appleはこの美しい角を主張する。そのままパームレストの縁沿いに指を滑らせると、金属のエッジの心地よい感触が指を伝わってくる。

 MacBook Proで使用されているアルミ削り出しのユニボディは、モノとしての高級感と、そのデザインのぎりぎりまでのシンプルさに凄みを感じる。MacBook Airから乗り換えて1週間で、画面サイズより、CPUパワーより、このユニボディを持つ、触れるという行為が、最も感動的だったのは意外な発見だった。誰であっても、持たないと、そんなこと感じるわけもないですから。

 ちょっと違う話。

 先週からAppetizer Japanチームのメンバーの間では、バーへ行き、自分の周りをきょろきょろしているのが流行だ。

 バーにiPhoneが落ちていて、それを拾ってウェブメディアが報じて、Appleが回収したと思ったら、記者宅に家宅捜索。これに対してアメリカの既存メディアがAppleのやり方を批判するなど、話題作りを超えたお騒がせな次期iPhone。2010年6月6日から行われるAppleの開発者向け年次イベントWWDC10で発表されるのではないか、と見られている。

 僕の最大の興味はiPhoneが、iPadやNexusOneみたいにSIMロックフリーで提供されるバージョンを用意するかどうか。だが、もう1つ気になっているのは「あのiPhoneが、あのデザインのまま登場するのだろうか?」という点。

 バーに落として面が割れてしまったiPhoneを、Appleは果たしてそのままリリースするだろうか。Steve Jobsは自信満々に「見た通りだろう?」と披露できるだろうか。どうもそこが引っかかる。あるいはあの一件がなければ、そのまま出てきたかもしれないが、もしかしたらデザインを変えてしまっているんじゃないか、とまで思い始めた。

 しかし、そんなこと、可能なのだろうか。

 「可能じゃないですか?」と語るのはモリさん(@torumori)。そのヒントも、今手元にあるMacBook Proの作られ方にあるんじゃないか、と語る。

 モリさんにも僕とおそろいのMacBook Proがゴールデンウィーク中にも届く予定なのだ。彼がユニボディのMacを初めて見たときには「どうしてアルミの削りだしなんて言うお金がかかる加工をしたのだろう」と疑問に思っていたが、その後次々に登場するユニボディのMac、そしてアルミとガラスという同じパーツで構成されるiPadを見て、なるほどな、と思ったそうだ。「むしろ、コストダウンになっている」と。

 AppleのMacBook Proを紹介するウェブサイトの「デザイン」のページには、どのようにMacBook Proが作られていくか、というユニボディの製造工程のビデオがある。巨大なアルミニウムのインゴット(円柱型の金属の固まり)を板にのばして、これを9つの削りだし工程で作っていく様子を見ることができる。ちょっとした工場見学ですね。

 CNC(コンピュータ数値制御)装置によって、ミクロン単位で削られていく板。もちろん複数のパーツを組み立てて作るよりも製造には時間がかかるはずだ。しかしこのCNCで作ると言うことは、主要な部品の「型」はデータとして持っているわけで、パーツの成形用の型は存在しないはず。つまり表面や内部、ポートの穴などのちょっとしたデザイン変更は、データ変更でできてしまう事になる。

 これがもしプラスティックのパーツを組み合わせるとしたら、型から作り直さなければならないし、もとよりパーツの部品点数が増えればパーツごとの在庫も必要になる。そしてデザイン変更にも手間がかかることになる。これは内部構造でも同じで、ちょっとしたマザーボードの変更でねじの本数が変わってしまった場合にどうするか。MacBook Proなら、データを変えるだけで対応がきくはずだ、とモリさんは語る。

 つまり、だ。AppleのMacBook Proのユニボディの最大のイノベーションは、むしろ中長期的に見たコストだったんじゃないだろうか。

 AppleはMacBook Proに関して、非常にシンプルで普遍的で、ある程度長い年数耐えられるデザインを作り上げただけではなく、最新のテクノロジーへの対応やちょっとしたデザイン変更を一瞬で済ませられるような、生産体制を、ユニボディのMacBook Proで実現し、コストダウンに結びつける。これはまるで、紫外線を樹脂に当てて行うラピッド・プロトタイピングをそのまま生産工程に生かしたような感覚なのだろうか。素人なのでわからないけれども。

 そして、ガラスとアルミとプラスティックという外装の素材はiPadでも全く同じ構成で登場した。材料が同じなら、調達コストだって安くなっていく。将来何かが変更されても、外から見ても何もわからないままに進化することになるだろう。

 この作り方が次のiPhoneにも用いられるとしたら、どうだろう。もちろん電波効率を高めるために、アルミを背面に多用すると行った事はできないかもしれない。しかしラピッド・プロトタイピングみたいなやり方で大量生産し、しかもコストを抑えるというものづくりのイノベーションを会得しているAppleなら、やりかねない、と思わないだろうか。

 そしてこれらの生産管理やコスト管理について、おそらくSteve Jobsが深く関与しているとは思えない。もちろん製品のデザインやポジション、機能、操作性などを取り仕切っているのは彼だが、どう作るかまで口出ししているだろうか。

 もし、たとえSteve Jobsが生産に関して口出ししていたとしても、このものづくりの凄みはAppleの資産として残っていくわけだ。


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Author

松村太郎 Taro Matsumura

Taro's Portraitジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ビジネスブレイクスルー大学講師。テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニング、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。スマートフォンに特化した活動型メディアAppetizer.jp編集長。 read more & contact

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