COLUMN | MacSPiCE

iPad: 「まだ、わからない」ポジショニング

by TARO MATSUMURA - 2010.03.23 10:33

iPad

 いよいよiPadまで2週間となった。今日から少しずつ、iPadを迎え入れる準備をしていきたいと思う。iPadがどのように生活の中に入り込み、また今までのコンピューティング体験を変えていくのか。全ては「まだ、わからない」状態だ。

 無責任にも思える「まだ、わからない」と言い切ることには意味があると思う。確かに手にする前にはいろいろ予測することもできるし、長年デジタルガジェットに触れてくれば、勘所もあるはずだ。しかしながら、それを発揮して、はじめから既存の枠の中に収めるのも、あまり面白くないな、と思ったからだ。

 まず、基本的なことを確認しておく。

 ケータイはiPhoneとドコモのデータ通信カードL-05A。Macは現在それぞれ2年物のiMacとMacBook Airがあるが、最近ゆっくり自宅で仕事をする機会も減ったため、iMacは開店休業状態だ。今日は自宅で仕事をしているので、キチンとミュージックサーバの役割を担ってくれてはいるけれど。

 ついでにリビングの環境も。また自宅には光回線が通じていて、液晶テレビは東芝のレグザ(外付けHDDで録画ができる)にApple TVと最近買ったWiiとDVDプレイヤーが接続され、それぞれDENONのAVアンプにつながっていて、BOSEの5.1chスピーカーが音を鳴らしてくれる(これもかれこれ7年くらい使っている音響セットだ)。

 ここに、iPadが舞い降りてくるのだ。

 iPadの発表の際、Steve Jobsは「iPhoneとMacBookシリーズの中間に加わる存在」と紹介した。確かに製品ラインやOSを考えるとその通りで、ソファに腰掛けて足を組んでiPadを操作しているプレゼンテーションもなるほど納得するところはあった。プレゼンテーションの中では。

 しかし、日本の東京で、ダイニングテーブルの上でMacBook AirからこのBlogを書いている僕は、どうしてもあの足を組んでコンピュータを操作する風景がイメージできずにいる。はっきり言って、日本の家は多くの場合、そんなに広くないのだ。コンピューティングのデバイスを、使う場所で切り替えるほど、ゾーニングされていないし、家電のデザインにもそれは色濃く表れる。

 2007年の秋口、僕が初めて電波が通じる状態のiPhoneに触れて衝撃を受けたNew Yorkで、工業デザイナーのゲーリー・夏目さんと話をしていたときに、アメリカと日本のPC周辺機器のプロダクトデザインについての違いを聞いた。

「例えばプリンタの場合、アメリカの家の中のPC回りやSOHOはスモールオフィスを再現しようとするため、見た目よりもオフィスっぽい見た目や性能が求められる。しかし日本は家の中のゾーニングが甘いため、しばしばリビングにプリンタが置かれることがあるため、デザイン性が求められる」(夏目氏)

 決して日本のプリンタの性能は悪くなく、むしろ素晴らしいクオリティを発揮してくれて、デザインへの気遣いもある。しかし当時は、デザイン性の高いプリンタは「お高くとまっている」印象で、かえって売れにくかったりしたというから面白い。

 この話からすると、iPadはアメリカの住居の中で、SOHOのゾーンからリビングのゾーンに抜け出してきたコンピューティング・デバイス、と言う位置づけには大いに納得する一方で、日本のリビングにはしばしば既にちょっとオシャレなパソコンがあるとすれば、iPadはどうしたものか。ベッドサイドは充電中のiPhoneがあるし。

 売れる、売れないの話は別として、日本においてiPadは、かなり外に持ち出されるのではないか、という予想をしている。スマートフォン以上、ノートパソコン未満の軽い存在として、移動中のモバイルデバイスとして活用されるのではないだろうか。

 そうなると、せっかく広い視野角を誇るIPS液晶が徒となる可能性もある。通勤電車では確実に横の人から画面が見えてしまうからだ。視野角を狭めるフィルムが売れるような特殊な市場を形成することも考えられる。とはいえ、ぜひ、暗くならず、画質を損なわないで、視野角を狭めるフィルムを作って欲しいな、と思いますが。

 続いて、通信環境やiPhoneとの棲み分け、ビジネスアプリ、iPadネイティブのアプリなどについても考えていきたいと思いますが、iPadを手にしたら、1ヶ月間、iPadだけでモバイルを乗り切れるか、と言うトライもしてみたいですね。


Author

松村太郎 Taro Matsumura

Taro's Portraitジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ビジネスブレイクスルー大学講師。テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニング、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。近著に『タブレット革命』『スマートフォン新時代』など。 read more & contact

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