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Restart "UP" - カールじいさんの空飛ぶ家インタビュー
by TARO MATSUMURA - 2009.12.04 16:51
いよいよ今週末、2009年12月5日から公開のPixer/Disney10作目の長編アニメーション映画『カールじいさんの空飛ぶ家』(原題:Up)。Pixerとして初のフル3D作品であり、「普通の」人間がメインキャラクターである初めての映画でもある。この作品でプロデューサーを務めたジョナス・リヴェラ氏に、作品について、これからの映画作りについて、お話を伺った。
ーー 今回のストーリーはどのように作られたのですか?
「今回の映画は、2つのシンプルなアイディアから始まりました。監督であり、アニメーターでもあるピート・ドクターは、どちらかというと内向的で、時々、どこかに飛んでいきたい、という考えの持ち主だということ。そしてピートが描いたのは、老人が風船を持っているイラスト。おじいさんは、沢山人生経験を積んでいて、いろんな物語を経験している人。これらを結びつけた物語になりました。テーマは再出発です。」(リヴェラ氏)
ーー 人間が主人公の作品は初めてですよね? 今までとの作り方の違いは?
「普通の人間はたぶん初めてですね。ミスター・インクレディブルは超人だったので。ただ人を描いたとしても、驚くべき事に、今までと似た作業でした。おもちゃ、クルマ、モンスター、魚、ロボットなどを扱ってきたが、ピクサーではこれらを人間のように扱ってきました。どれをとっても、人生は自分たちに近いものがありました」(リヴェラ氏)
ピクサーの映画は、関わるスタッフのこだわりや趣向によって、ストーリーやキャラクターが大きく左右されるところが魅力の1つだ。投影する対象がおもちゃやクルマだったが、今回老人ーー将来の自分たちの姿を描き、主人公はストーリーの最後に再出発を誓う。この再出発が意味するものは何だろう。
ーー ピクサーは会社やビジネスから見れば、現在までに、3つのステージが存在していると思います。創業初期はコンピューターアニメーションの技術企業として、アニメーションスタジオとして作品を作り出す独立企業として、そして現在のディズニーの一員としてのステージ。実際にこのステージについてどう思われますか?
「作品を作り始めてからも3ステージがあると思っています。1つ目はトイ・ストーリー、バグズ・ライフ、トイ・ストーリー2の3作品、2つめはモンスターズ・インク、ファインディング・ニモ、Mr.インクレディブルの3作品、そしてカーズ、レミーのおいしいレストラン、ウォーリーの3作品です」(リヴェラ氏)
ーー と言うことは、3つのステージが終わり、今回のカールじいさんの空飛ぶ家は、4つめのステージにさしかかるタイミングなのですね。それぞれのステージの変化と作品を比較するとどうでしょう。
「トイ・ストーリーの頃は100人だったスタッフも、現在では1200人まで増えました。最も大きな変化はテクノロジーです。トイ・ストーリーは私も好きな作品の1つですが、今あの映画を見ると、頭を抱えたくなります。例えば、当時は風船の表現なんてままならなかったし、光の反射もより早くなり、美しくなりました。今回人間がキャラクターですが、布や生地などの表現の素晴らしさは歴然です。レミーのエプロンとも比べてみて下さい」(リヴェラ氏)
ーー これまででコンピューターの処理能力の向上によって、Pixerのデジタルアニメーションは進化しているのですね。目で見てわかるほどめざましいこと点にも驚きます。そのほかの変化についてはいかがですか?
「技術は進化しましたが、製作の進行などの作品の作り方は全く変わっていません。時間をかけてストーリーボードをじっくり作り、絵コンテ、デザイン、設計をして製作します。社内ではよく『テクノロジーが2倍進化したら、クリエイティブは3倍膨らませろ』という言葉が使われます。技術の進歩以上に、想像力を膨らませるのです」(リヴェラ氏)
ーー 今回の作品は3D上映がなされます。先ほどの4ステージ目は「3D作品の始まり」も含まれているようですが、3D製作の経験これまでの制作フローからの変化があったのでしょうか?
「まず、今後のPixer作品は全て3D上映になります。製作環境においては、もともと3D製作をしているため、上映の形態が3Dになったとしても、とても親和性が高いのです。今回は2台のカメラで撮影することで、3D化をしています。今回立体3Dにした点は満足しています。ただ、驚くような仕掛けとして3Dを使いたいとは思いません。あくまで、物語をより深く伝えるためのツールとして使っていきたいと思っています」(リヴェラ氏)
ーー 編集やカットが3D向けに作られているのではなく、2Dでも3Dでも同じストーリー展開にしているのですね。あくまで今までのストーリー重視の姿勢が3Dになっても継承されているということでしょうか。今後家庭でも3Dが見られるテレビなどが新製品として注目を集めつつあるが、家庭にも3D作品が入り込むと思われますか?。
「劇場で体験する3Dの迫力は、映画を劇場で見てもらう機会を広げていくと思います。ただ、あくまでストーリーが中心、というピクサーの姿勢は劇場でも家庭でも変わりません。3Dでないからストーリーが伝わらない、というようにはしたくないのです。仕掛けとして使うと飽きられます。ストーリーを伝える道具の1つとして使っていきたいのです」(リヴェラ氏)
ーー 最後に、Pixer社内で活躍するMacやiPhoneについてお聞きしたいと思います。
「社内のパソコンは全てMacですね。みんながクリエイティブで使うようなフォトショップやイラストレーターもMacで活躍しています。音楽やちょっとした映像をiPhoneでチェックしたりする光景もよく見かけますね。特に、監督のピート・ドクターは、製作のスケジュール管理までiPhoneを使っていて、時々取り上げたくなるぐらいです。通常の製作管理、マネジメント、スケジュール、音楽製作などは全てMacで行われていますよ」(リヴェラ氏)
インタビューの片付けをしながらリヴェラ氏に、日本の好きな映画は?と聞くと「ジブリはみんな好きだよ」と即答していた。「アメリカではハリウッド映画のように1カットが非常に早いが、宮崎作品はカットに呼吸の間を与え、映画全体で世界観を伝える」と、情感を伝えるアニメーションの手法として日々参考にしているという。
そんなこぼれ話を楽しみつつ、ぜひ劇場で見てみて下さいませ。
ちなみにPixerがDisenyにジョインして初めてジョン・ラセター氏が製作指揮を執ったディズニー映画「ボルト」の際のインタビューはこちらから。
Author
松村太郎 Taro Matsumura
ジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ビジネスブレイクスルー大学講師。テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニング、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。近著に『タブレット革命』『スマートフォン新時代』など。 read more & contact
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