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モバイルシアタースタイルという提案 - au W44S
by TARO MATSUMURA @taromatsumura 2007.01.27 15:48
ケータイでテレビなんて見ないんじゃないか、と当初思っていた僕も、「そろそろケータイでテレビを…」と思い始めるくらいにワンセグケータイの端末が充実し始めている。端末の充実はデザインの洗練もつれてくる。もはやワンセグは、厚ぼったい高機能ケータイのモノ、と言う印象はぬぐわれてきているのではないか。その中でも、インパクトあるワンセグケータイを世に送り出してきたのは、ソニーエリクソン製のau W44Sである。なんといっても、折りたたみケータイの開き方を変えたのだから。
W44Sは、約49mm × 101mm、厚さ24mmのサイズで重さは約146gの重量級だ。しかし机に置かれているW44Sを見かけると、そのボディサイズや重さがクオリティに昇華されている様子がよく分かる。
手元にあるブラックの端末は表面にツヤのある、漆にも見えるような透明感ある光沢を見せる。底面の角は落とされ、机においてあっても端末が浮いているような不思議な面持ち。そしてツヤのあるボディと対照的なメタル感があるヒンジが、端末を正面から見て右肩のあたりにせり出している。端末を閉じて机においているだけでも、もとしての価値や存在感がとても高い端末に仕上がっている。
もちろんこの端末の最大の特徴は、今までにない折りたたみケータイの開き方だ。
まずはこれまでの折りたたみケータイのように開いてみる。中にはヒンジと同じメタリックなダイアルキーと、3インチの大画面液晶が姿を現す。十字キーとソフトキーは、テレビやHDDレコーダーのリモコンのように、円形とそれを取り囲むソフトキーが配置されている。またダイアルキーは、フラットなトップと押し心地の良さが特徴。ただ爪の長い人は、キーを押す際に引っかかってしまう可能性がある。
次にケータイをいったん閉じて長辺を軸に開いてみると、先ほどまで縦長に使われていたディスプレイを横長の画角で使うことが出来るようになる。特殊な動きをするヒンジについては剛性感を心配するかも知れない。しかしこのヒンジはとても上部に出来ていて、開閉について不安に思う点はなかった。
ちなみにシャープ製のAQUOSケータイやパナソニックモバイルのP903iTVなどは、端末をいったん閉じなくても横長画面に使えるように設計されている。そのためW44Sのようにいったん閉じなければならない仕組みは面倒に思えるかも知れないが、ケータイのメールを打っていてそこからいきなりワンセグに移行、と言う使い方が頻繁にあるかと言われると疑問だし、利用する機能とケータイの開き方が分かれている使い勝手は決して悪くない。
端末を横長にして開くと、「モバイルシアタースタイル」としてW44Sを操ることになる。こうして開くと、テンキー側の両端に施されたメッシュの部分がステレオスピーカーになっている点に気づく。この点もまた、うまいデザインである、と感じさせてくれる。手に持ってワンセグ視聴などの体制を維持するには、150g弱のボディは重たいと感じた。
しかし机の上に置くと映えるこの端末は、デスクやリビングで、あるいは電車の中で膝の上に載せて、というスタイルで映像を視聴するのに適している。机において使うケータイ、というのも新鮮だった。
W44SはauのWIN端末のスペックをきちんと押さえている。最大下り2.4Mbps、上り144kbpsのパケット通信で快適なデータ通信環境を提供してくれる。またディスプレイもとても大きく感じる。メイン液晶は3.0インチ、ワイドQVGA(240×432ピクセル)の解像度に加えて、ソニーの薄型テレビブランド、BRAVIAの画質向上技術を採用している。ワンセグやデジタルラジオ視聴、LISMOビデオクリップなどの映像を見る際にこれらが適用される。
このディスプレイは、写真の撮影や閲覧にも威力を発揮する。W44Sには317万画素AF付きCMOSカメラが背面に搭載されており、手ぶれ補正に対応。最大で2048×1536ピクセルの撮影が可能なほか、ハイビジョンの振る解像度1920×1080の写真も撮影できるため、自宅に薄型ハイビジョンテレビがある場合は画面いっぱいの写真を楽しむことが出来る。しかし動画の解像度は320×240ピクセル止まり。他のワンセグケータイ等が640×480ピクセルの動画に対応し始めているだけに補強が必要な点だと思った。
W44Sの機能面での最大のイノベーションは、デジタルラジオを搭載した点。これまでテレビやワンセグは専用機が発売されて、ケータイやPCに盛り込まれると言った流れで普及してきたが、民生用でもデジタルラジオは初期からケータイに搭載される機能としてW44Sが初号機としてリリースされた。
2007年3月現在はTOKYO FMが本格放送を実施しているが、2007年4月1日からTBSラジオ&コミュニケーションも本格スタートを予定しており、今後も次々に本格放送をスタートさせるラジオ局が増えてくる。W44Sも対応しているFMラジオ受信機能、EZ FMが好評だった点で、新しいデジタルラジオというメディアもauを軸に普及が進んでいくことになりそうだ。
もう1点、エンターテインメント周りの機能強化はLISMOである。W44Sは最新版のau Music Portに対応していて、音楽フォーマットがAAC(.m4a)、WMA、WAVをサポートするようになった。つまりiTunesで読み込んだAACファイルも取り込めるようになった。また標準のフォーマットHE-AACのビットレートも48kbpsだけでなく、最高で128kbpsまで対応が広がり、ケータイであってもより高音質な再生が可能になっている。
その他、生活にフィットする機能も全て盛り込まれている。おサイフケータイの機能を提供するEZ Felicaは内蔵され、やはり背面に読み取り部がある。GPSももちろん搭載されており、EZナビウォーク、EZ助手席ナビ、安心ナビ位置確認、安心ナビエリア通知がプリインストールされている。
これまでケータイで音楽を聴いたり、ワンセグを見たりすることが可能な端末はたくさんあった。その中でW44Sは、端末を開く方向を変えるというギミックによって、モバイルコンテンツ消費の入り口を開くというアクションをより明確化しているように思われる。これまでケータイの画面だった3インチ液晶も、開き方を変えて、縦横が入れ替わることで、モバイルシアターの画面へ移行したことがわかりやすい。
W44Sには、せり出しているヒンジ部にも「TV」のショートカットボタンが用意されている。これを押すと起動するソフトはau Media Tuner。このau Media Tunerはワンセグ、デジタルラジオ、EZチャンネルプラス、音楽、ビデオ再生などを1つのソフトでこなすアプリケーションである。1つのソフトで再生しているため、再生するメディアをシームレスに移行することが出来る。もちろんケータイスタイルの際にも呼び出すことは可能だ。
シアタースタイルでau Media Tunerを起動すると、シアターメニューが出てくる。どこかで見慣れたようなデザイン、それは自宅で使っているソニー製HDDレコーダー、スゴ録のメインメニューと同じXMB(クロス・メディア・バー)に似たメニューが出てくるのだ。操作方法も同じで、十字キーの左右で再生したいメディアの種類を選ぶと、それぞれの専用のプレーヤーの画面に移行する仕組みだ。なんだか自宅の大画面テレビのメディア体験が呼び起こされて、それがケータイの上で行われている点は、フックが強かった。
ワンセグやデジタルラジオと言った放送系、着うたやビデオクリップなどのダウンロード系に留まらず、さらに多様な音声・映像メディアがここに集結してくると思うと、モバイルシアターの可能性を感じるところが大きい。その際、ケータイの開き方を変える、というコンテクストが有効になってくる。
新しいメディアであるデジタルラジオについて、少し触れておく。デジタルラジオは地上波デジタルラジオの事を差していて、ISDB-T SBと呼ばれる規格で、ワンセグと共通した方式で送出される。東京や大阪では地上波アナログ放送(VHS)の7chに8セグメントを設定している。1セグメントあたり280kbps、圧縮方式はMPEG-2AACとなるため、高音質であることは言うまでもない。
番組受信中は、画面にワンセグのようなデータ放送が表示される。またスタジオ内の静止画等も配信されてくる。例えばラジオのスタジオで喋っているDJやゲストの様子もあわせて楽しめる点は新しい。あるいはイベントの様子などが配信されれば、今までと違ったラジオの価値になる。データ放送からは、チケット予約や楽曲の購入へ誘導する使い方も想定されている。W44Sでは番組の録音やキャプチャも可能だが、可能か不可能かは番組による。
そんな特徴を持ったデジタルラジオだが、放送エリアや局が少ないため、生活の中でどのような使い方が考えられるか、と言う点への評価は以降の端末のリリースの際に見送りたい。
W44Sをふりかえると、特徴的なヒンジによってケータイスタイルとシアタースタイルの使い分けをする点から全てが始まっていた。実際のところ、通常のケータイ利用しようとすると、このせり出しているヒンジは右手で持ったときも左手で持ったときも干渉してしまっている。
しかし使いやすさを邪魔している右サイドにせり出したヒンジは、メディアを持ち歩いて、出先で楽しむことを考えたときに、ケータイのモード、スタイルの使い分けという点で重要な意味を持っていると思った。
その利用スタイルについて。シアタースタイルで横長に開いてメディアを楽しむ際は、やはり手で持つのではなく、机の上に置くと快適である。しっかりとしたヒンジは角度調節にも便利で単体でもテレビの見やすさは他の端末を1歩リードしている。
ケータイやネットは接近して使うメディア、テレビは離れてみるメディアと言われているが、1台のケータイでこの両方をきちんと両立させている点も魅力の1つ。なにより高い質感を持つスマートさとメディア体験の魅力を両立させた初めての端末と呼んでも良いかもしれない。
ここにチャレンジングなメディア対応として、ワンセグの他にデジタルラジオやLISMOの強化、これらを束ねるau Media Tunerを搭載している。リッチなモバイルシアターのコンセプトに共感するならば、このW44Sは手放せないパートナーになるだろう。特に、家でソニー製のAV機器を使っている人は、少し触れただけで、その価値に気づくのではないだろうか。
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