REVIEW
エコカー、乗り比べ
by TARO MATSUMURA - 2009.10.23 19:10
東京モーターショー #tms09 の目玉の1つは、各社の出展車両を幕張メッセ周辺の公道で試乗できるところ。トヨタ新型プリウス、レクサスRX450h、日産エクストレイル・クリーンディーゼル、三菱i MiEVの4台に乗ってきました。
ちなみに僕は、免許取得11年目、ゴールド免許、高校生時代に自動車部。ハイブリッド車、電気自動車ともに初体験です。運転車の視点で、これらの4台を比べてみたいと思います。
まずは予約殺到で納車待ちというトヨタのプリウスから。3台目になってEVモードを搭載し、完全なEVに移行するまでの5〜10年のスタンダードなスタイルになるんじゃないか、と目されているエコカーである。やはり欧米での人気のクルマだけあって、1800ccのエンジン、社内のインパネはワイドに見せる演出を施し、室内の広々感を演出している。
走り始めると、モーターだけの駆動で静かな走り出しながら、説明員と大人2人での滑り出しは弱々しい。というより、出来ればモーターだけで走りたい、と思っていたので、どこまで踏めばモーターだけでOKなのかという感覚はつかめない。初めてですからね。ただ、EVモードならそんな心配をすることないんだろう。
室内は大きく感じるが、車体は普通のサイズ、ということで、車両感覚はつかみにくい。またブレーキのペダルの感触は、約15分のドライブ中、結局最後まで慣れなかった。どう踏めばちょうどいいのか、踏み加減とブレーキのきき加減が、回生ブレーキのためになかなかつかみにくい。車両感覚とブレーキに慣れるまでは、慎重な運転をすることになる。
同乗した方によると、アクセルの開き方によって燃費が大きく変わる、と「エコ的視点」で乗りこなせるかどうかにも、慣れが必要なのだという。まあクルマって言うのは得てして、自由に思い通りに操るまでの苦難と、操れるようになってからの楽しさがあるが、楽しい結果が良い燃費の数字、と言う価値観が、このクルマの楽しさなのだろう。
この試乗企画は、運転しながら開発担当者とクルマ談義が出来る点であることに気づいてきた。さて続いてはレクサスRX450h。レクサスのステアリングを握るのは初めてではないが、RXは始めて。高い視点、小気味良く締まった車内と開けた視界は、明らかにクルマのサイズはプリウスよりも大きいはずなのに扱いやすそうだ。
基本的なメカニズムはトヨタもレクサスも同じハイブリッドシステムであるが、車に寄っての味付けが大きく違う点を体感することになる。プリウスががちがちに電子制御されたエコドライブ武装だとすれば、RXはナチュラルなガソリンエンジン車をちょっとハイブリッドで味付けしている、と言う感触でなじみやすい。
「欧米でもRX(ハリアー)は人気車種でした。ただ前回のハイブリッドはどうも走りが悪いんじゃないか、と言うおしかりを受けていましたので、今回はちゃんと走りにこだわったクルマづくりをしています。プリウスはEVにも対応した新世代のクルマ基準だとすれば、RXは現代のクルマへの価値基準に新世代をミックスした感覚でしょうか」(同乗した担当者談)
踏み込んだときの加速はさすがに暴力的だった。そして大きいだけでなく重い車体は、いくらハイブリッドだとしても根本的な燃費の良さにはたどり着かないようだ。しかし、担当者の方が指摘する緩やかな移行は、明らかに推し進める1台になっているのだと思う。
続いて、日産のクリーンディーゼルエンジンを搭載したエクストレイルに試乗。燃料電池車なども出展されているが、こちらは同乗のみなので割愛。クリーンディーゼルのクルマは日本ではメルセデスのEクラスに乗っただけなのだが、このE320 CDIはディーゼルかどうかわからないほど静かで上品な仕上がりだった。
欧州では6割近くがクリーンディーゼル車に移行していると言われている。
ル・マンではAudiのディーゼルスポーツ車が連勝している。AudiのA4やA5、TTなどに設定されているTDI(ディーゼル)のように、スポーツモデルへのディーゼル適用も進んでいる。そういえば前回のモーターショーでVolkswagenのEco Racerという、1L 100km走るディーゼルスポーツも展示されていたっけ。
しかし日本ではスポーツモデルはおろか、ディーゼルの評判は極度に悪い。臭い、うるさい、というイメージを払拭できずにおり、日本でディーゼルの普通車はほとんど見かけないという状態だ。しかし日産やスバルは、主力車種へのクリーンディーゼルを始める予定だ。その1車種がこのエクストレイル・クリーンディーゼルだ。
試乗車の内、このクルマだけがマニュアルミッション。2000rpmから30kg-mを超える最大トルクを出力するのだが、同乗の担当者によると、手元にあるオートマティックやCVTなどのミッションで、このエンジンに合うモノがなかったのだという。
低速トルクがあるマニュアルミッションは、運転がしやすい。ひとまずアクセルを踏まないでクラッチをつないでもちゃんとスムーズに走り出す。注意しなければならないのは、すぐにレブリミットに当たってしまう点。どうも2000回転前後をキープするようにギアチェンジしていく、というのはせせこましいというか。
あと音。メルセデスの印象から比べれば、非常にからからとしたディーゼル音は気になるレベルだった。いくらエクストレイルがSUVでも、ちょっとこれはつらい。製品版になってどう改善できるかわからないけれど、欧州でこれが売られるか、と言われると相当競争力は低そうだ。
さて最後に試乗したのはi MiEV。完全な電気自動車だ。今まではガソリンエンジン+モーターだったり、ディーゼルエンジンだったり、ある程度なじみがありそうな形態だったが、このクルマは完全に異質で始めて乗る種類のクルマである。
しかしその印象は非常に意外なモノだった。
今日乗った4台よりのうち、もっとも今までのガソリンエンジン車に近い加速感、減速感を実現しているのが、i MiEVだったのだ。プリウスよりも自然な運転感覚があり、レクサスRXよりも軽快。そしてエクストレイルよりも格段に静か。ここには開発陣の乗り味に対するこだわりがなせる技が込められていた。
「電気自動車と言っても、今までと違う乗り味では受け入れられないと思いました。ガソリンエンジンは回転数が上がるにつれてトルクが出ますが、モーターは最初からフルパワーが出ます。放っておいたらホイールスピンをするほどパワフルなのです。そこで、低速トルクを抑えて、ブレーキの感触もガソリン車に近づけています」
今までクルマを運転したことがある人にとって、i MiEVはすぐに好きになるドライビング感覚の持ち主だ。使い勝手が違う点は、今までのようにガソリンスタンドに行って5分で満タンに出来ないこと。
いろいろなアイディアで、電気スタンドのインフラを整えていくことになると思うが、5〜10年の長い目で、最適解を探していくことになるんじゃないだろうか。ただそれを待ってでも、このEV体験は素晴らしいモノだった。日産LEAFやスバルR1などの他の車種にも早く試乗してみたいところだ。
Author
松村太郎 Taro Matsumura
ジャーナリスト・企画・選曲。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ビジネスブレイクスルー大学講師。テクノロジーとライフスタイルの関係を探求。モバイル、ソーシャルラーニング、サステイナビリティ、ノマドがテーマ。近著に『タブレット革命』『スマートフォン新時代』など。 read more & contact
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