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水没ライン
by TARO MATSUMURA @taromatsumura 2004.06.28 23:28

小田急線の参宮橋と南新宿の間にあるガード下。歩道は同じ高さで続いているが、車道は高さを稼ぐために少し下に落ち込んでいる。そしてその壁面に引かれた白いライン。船底か港の岸壁か、はたまた河川敷の建物か。いやいや、ここは立派な公道だが、明らかに水がたまるという事をアピールしているようなものだ。
何年前だっただろう。僕が小学校5年生か6年生の頃、この先にある学習塾へ通っていた。普段は電車で通っているんだけれど、夏のある日、激しい雷雨に見舞われて、母親が送ってくれる事になった。気象が好きだった僕のこと、そのときの気象情報をよく覚えていて、トーキョーでも1時間に60ミリ級の雨が20分くらい続くというアナウンスがされていた。
このガード下の前後は長い坂になっており、高さを稼ぐためとはいえ、結果的にこのガード下が最低地点となってしまっているのだ。少し前までのトーキョーの降水処理能力の限界は1時間に50ミリ〜55ミリと言われていて、この数字が降れば処理できる、と言うよりは少しあふれ気味になるという感覚だと思う。そこに60mmの雨が降っているのだ。
そしていよいよ、この線路をくぐるところまできた。しかし目の前は、障害物競走さながらの光景が広がっている。対向車線からきていたメルセデスがぷかぷかと浮いていて、乗っていたであろう人が一生懸命メルセデスを押している。浮いているんだからいくらアクセルを踏んでも前へは進まないし、エンジンに水が入ってくるとまた都合が悪い。
そんなほぼ負け戦状態の悪戦苦闘を、何台ものクルマが立ち往生をしながら見ている。おそらく写真の0.5mと1.0mのラインの間くらいまで水がたまっていたのだろうか。「超えなければ」母はそう思ったそうだ。そして次の瞬間、アクセルを全開にして強行突破を試みた。
一瞬の出来事だった。勢いよく水たまりに入っていったクルマにはフロントガラスくらいまで水が押し寄せる。しかし付いていた勢いで何とか反対側までたどり着き、大きな水たまりを無事に走覇する事ができたのだ。
後日調べてみると、バンパーが水圧でややへこんでいるのと、ライトの中に水が沢山は入り込んでいた程度の損傷だったそうだ。何事も勢いが大切であることと、道具を信じるということ。それによって無事に対岸へたどり着く事ができたのかも知れない。でももう絶対にやらない方が良いと思う。多分まぐれだったから。
気の毒なのはメルセデスを押していた人たち。WRCのラリーさながらに勢いよく水たまりに入っていったんだ。当然のことながら、津波のごとく水を跳ね上げていたに違いない。
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